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設計者の想いの日々(ブログ)2012年12月19日(水)大人の諸事情とは何か?
もうだいぶ昔のことです。私が駆け出しの頃です。
アルミのカーポートも、柱や屋根があり、立派な付属建築物ということで、建物本体と併せて確認申請書を提出したことがあります。もちろん、某有名メーカーの既製品です。建蔽率も問題ないし、大丈夫だろうとタカを括っていたわけです。 ところが、、、 役所の建築指導課から連絡があり、驚きました。 「アルミのカーポートについてですが、アルミの構造材は大臣認定を受けていますか?受けていなければ、建築基準法上、アルミの構造材は認められません(現在は法律が一部改正されました)、また、屋根材は不燃材になっていますか?建築基準法22条指定地域につき、不燃材である認定書を提出ください」というものでした。 調べてみたところ、どこのアルミのカーポートも、構造物としての大臣認定を取っていなければ、当時の透明な屋根材は不燃材の認定書などありません。 早速、役所の建築指導課に出向き、私は、「これだけ普及している有名メーカーの既製品がなぜ建築基準法では違法なのか?」という押し問答を、審査した係員としばし、遣り合ったわけですが、最終的に、係員は、「私に言わないでくださいよ。」と逆切れして、話は終わり、私のほうも、アルミのカーポートは中止ということで、確認申請を下ろしました。 当時の私は、社会の矛盾というか、大人の諸事情を否応なく、思い知らされたわけです。 その後、法律が改正され、「アルミニウム建築物の構造方法に関する技術基準」が定められて、アルミの建築物も建築可能となりました。 しかし、現在でも、「建築基準法適合」とわざわざ謳っているカーポートをよく見かけます。つまり、建築基準法に適合してない商品が多く存在してるわけで、ホームセンターなんかで安売りしてるものは、ほとんどが不適合と言っていいでしょう。 たかだか、カーポートなんかで目くじら立てる必要はないかもしれませんが、一事が万事、姉歯事件以降も、依然として、「大人の諸事情」が多いのは確かです。
文化財を保存維持管理していくために
先週のニュースです。
「文化審議会(宮田亮平会長)は14日、戦後復興の象徴で、高度経済成長の原点としても親しまれている東京タワー(東京都港区)など建造物126件を新たに登録有形文化財に登録するよう、田中真紀子文部科学相に答申した。近く答申通り登録される見通しで、同文化財は9262件となる。」 後世に伝えうる歴史的建造物を文化財に指定及び登録して、保存・維持・管理していくことは非常に大事なことだと私は考えています。 けれども、文化財となれば、そうそう壊すことは出来ません。 そして、職人の技能不足により、いずれ文化財のメンテナンスが出来ない時代が否応なくやってきようとしています。 例えば、茨城県石岡市に多く残されている、近代建築の商店施設に掲載されているような、昭和初期時代に建てられた商店建築の登録文化財の数々は、建築物の乾式化・機械化に伴う左官業者の熟練工の激減で、今後の修復工事の行く先が危ぶまれています。 40~50%の粗利を追求する日本特有のシステムである「ハウスメーカー・ビルダー」が、職人・技術者を粗末に扱っている現況を変えていかなければ、文化財の修復はおろか、一般住宅の改修・リフォームすら満足に出来なくなる事態に、近い将来、陥ることになります。決して、時間的な猶予はありません。 もちろん私たちは努力しています。けれども、具体的な打開策を見出すために、現時点で、妙案がないのは事実です。
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