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設計者の想いの日々(ブログ)茶室・得月亭~華美に流れず、贅を凝らさず
先日、水戸市の彰考館・徳川博物館の敷地内に、2年前に移築された茶室・得月亭で、施工した大工さんを囲んで見学会・勉強会が行われました。
得月亭は、常陽銀行の創設者である亀山甚氏が戦後、間もない頃に水戸市内に建てた茶室です。その茶室が水戸徳川家に寄贈されて、徳川博物館の敷地内に移築されました。 梅まつりのお茶会の日取りが決まっていたせいもあり、移築作業3ヶ月という突貫工事で行われたようです。4畳半の茶室には床暖房がついておりました。内部は撮影禁止です。 にじり口。ここから頭を垂れながら、茶室に入ります。千利休が考案したものです。 待合。ここでお茶会が始まるのを待ちます。 さて、本格的に茶室を一軒家で新築で建てる場合、建築費用がいくらかかるかというと、坪200~300万程度かかっているのが相場のようです。茶室の大きさはだいたい10坪程度ですが、一般的な住宅を新築する金額以上の費用がかかってしまうことも決して珍しくはありません。 なぜ、ここまで費用がかかってしまうのか? それは安土・桃山時代や江戸時代の頃に造られた茶室を復元・真似して建てようするからです。 当時では手に入りやすかった材料も、現在では入手困難だったりするわけで、その無理を通して建てるのですから、金持ちの道楽でないと建てられないような金額になってしまうわけです。 果たして、このような現在の茶室の造り方が、千利休の頃の茶の湯の精神性を引き継いでいるのか? 私としては非常に疑問に思っています。 千利休の頃の茶室は、その辺に生えているような雑木を取ったり、あり合わせの材料で、にじり口のような創意工夫を凝らしながら、造っていきました。当時の贅を凝らすような造り方はしなかったはずです。 もちろん、伝統を引き継ぐことは大事です。ただ、伝統を引き継ぐことと、当時の茶室を真似して造ることを混同してはいけないと思います。 「不易流行」という言葉があります。松尾芭蕉が『奥の細道』で語っている理念です。 「不易」とは、変わらないこと、世の中が変遷していく中でも絶対に変わらない不変の真理、先代から受け継いで後世に引き継ぐべき伝統のようなことを意味しています。 「流行」とは、文字通り、変わるもの、社会や時代の変化に伴い変わっていくもの、あるいは変えていかなければならないもの、時代の流れに逆らわず新しいものを摂取していくことを意味します。 そして、この相反するかのように見える「不易」と「流行」の根源は結局同じものだというのが松尾芭蕉の語る「不易流行」です。 伝統に固執すれば、陳腐化し、流行に振り回されば、何も残ることはありません。 引き継ぐべき伝統は引き継ぎ、時代の流れに逆らわず、新しものは貪欲に取り入れる。そして華美に流れず、贅を凝らさない。 現代的な解釈をし直した茶室が一体どんなものなのか、自分自身に絶えず問いかけをしながら、設計者の一人として、日々の業務を行っていきたいと考えています。
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