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設計者の想いの日々(ブログ)2010年12月26日(日)階段を考える
階段からの墜落事故で亡くなられる方は、一年間に約500人程度で推移しています。骨折等の怪我を含めれば、その数倍以上の方が事故に合われていると推測されます。交通事故で亡くなられる方が現在約5000人ですから、その1/10にも上る方々が階段での不慮の事故で亡くなられている計算になります。階段を上り下りする時間と、道路を歩行したり自動車を運転する時間を比較すれば、圧倒的に階段の上り下りする時間のほうが短いわけですから、階段という場所がいかに危険であることがおわかりになると思います。
このような背景があったせいか、建築基準法では、約10年前に、階段には手摺を義務づけるなどの対策が取られました。10年以上前の住宅の階段には手摺のない物件が非常に多いのですが、このような物件に対しても、建築基準法を厳格に運用して、補助金を出してでも、その対策に取り組むべきであると思います。 折角の機会ですから、理想的な階段をご説明したいと思います。階段の用語で、「蹴上げ」と「踏面」があります。「蹴上」とは階段一段あたりの高さで、「踏面」とは文字通り、足を踏む面の長さのことを指します。 パブリックな場所、例えば、駅などの階段は、「蹴上げ」が150mm、「踏面」が300mm程度です。 「踏面」+「蹴上げ」×2=600 これが理想的な階段と言われています。 靴を脱いで上る階段、例えば、住宅の階段は、「蹴上げ」が170~180mm、「踏面」が225~250㎜が一番上り下りしやすい階段です。また高齢者を配慮して、一呼吸置くことができる踊り場があると便利です。このような階段の場合の段数は17段上がり前後になります。 また、一直線状態にある、いわゆる鉄砲階段を避け、折り返し階段やL型階段で上ることが階段の鉄則です。 階段の有効幅については、一般的な住宅で75cm程度ですが、この幅にたった15cmを足した90cm幅とするだけで、階段の印象が余裕あるものにガラリと変わります。そして、大きな荷物の上げ下ろしでは、その威力を十二分に発揮することになります。 また45~50坪以上あるような住宅ですと、階段有効幅75cmの場合、非常に窮屈な印象の階段になります。60坪以上あるような住宅展示場で、よくそのような狭い階段が見受けられますが、そのような住宅会社は設計力が無い会社と断じて間違いはないと思います。 狭小な住宅では、その全てを望むことは難しいのかもしれませんが、限られた空間のなかで、バランスよく遣り繰りすることが設計者の腕の見せ所であります。 安全性と密接な関係のある階段を大事に設計することの重要性をこれからも自ら再認識しながら、「たかが階段ではない」と訴えていきたいと私は考えています。
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