設計者の想いの日々(ブログ)
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大工の腕の良し悪しを考える

今まで、東京・神奈川・茨城で仕事をしてきた経験上から申し上げると、腕の良い大工が多い地域の順位は以下の通りです。

茨城>>>神奈川>東京

東京・神奈川などの都会と比較して、圧倒的に茨城のような田舎に、腕の良い大工が多い理由としては、まだ和風の化粧造りの家が残されていること、土地が広く、作業場を持つ大工も多いので、自ら加工作業のできる環境があることなどが挙げられると思います。

東京・神奈川時代の頃は、とにかく大工の腕の悪さには泣かされてきましたが、茨城に戻ってからは、そういうことも随分と減りました。
ただ、茨城は田舎ですから、間取り・外観・提案力のようなセンスや社会的教養を、大工にはあまり期待できません。そして、大工が自らの技術の腕を奮うことに頑固さを持ち合わせる分には良いのですが、センスのない分野にまで、頑固さを主張してくるところには辟易します。このような悪しき側面が消費者に見抜かれて、大工が運営する工務店からハウスメーカー・ビルダーのような新参者に仕事が流れているのは紛れもない事実であります。

今まで大工の腕の良し悪しを随分と見てきましたが、腕の悪い大工に、ほぼ共通している特徴があります。
それは、口が達者なことです。
もちろん、口が達者な大工にも腕の良い大工はおりますが、腕が悪い大工には、自称・名人が多いようです。口が上手なので、お客さん受けが良かったりする場合も多いようです。また、腕を奮うより掃除をこまめにすることで、無意識のうちに、粗(アラ)を隠そうとしている深層心理を垣間見ることができます。
現場の掃除が行き届いているからと言って、段取りも行き届いている、すなわち、必ずしも大工の腕が良いというわけでもありません。
腕の悪い大工は今の寒い時期によくわかります。隙間無く納めるところを、それが良く出来ないので、腕の良い大工と比較すると、隙間風が多いせいか、やはり寒いのです。このような下手糞な大工が、ハウスメーカー・ビルダーのような下請になって、高気密・高断熱の家を造っていたりするのですから、世の中、皮肉なものです。
この腕の良し悪しを建築士でも意外と見抜けない者が存在するのは事実で、住宅メーカーの営業マンレベルに至っては、言わずもがなです。

大工は、かつて棟梁と呼ばれていました。今でもそのように呼ぶ地域はもちろんあります。
大工が頭となって、基礎・屋根・板金・内装・左官など、その他各種業者を取りまとめて、お客様との折衝をも行ってきましたが、社会が複雑化し、消費者の価値観が多様化した現在では、ちょっと難しいのではないかと私自身は思います。
ただ、以前にもこのブログで申し上げた通り、大工には若い世代に引き継がなければならない特殊な技術があります。その引継ぎが疎かにならざるをえない時代の流れのなかで、技術の伝達のための環境造りを、設計者の一人として、積極的に行っていく所存であると、重ね重ね、申し上げる次第です。
カテゴリ:建築雑感 2010年12月10日(金)
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