設計者の想いの日々(ブログ)
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2010年6月28日(月)

珪藻土

珪藻土という塗り壁の材料が出来てから15年以上経ったでしょうか。約15年前は、業者から「珪藻土って何?」、「どうやって塗るの?」、「施工しにくい」、「建材屋で扱っていない」、「割れやすい」などの声もあり、四苦八苦しながら、工事の監理をしていました。珪藻土の施工実績がないせいか、業者から出てくる見積も非常に高く、なかなか手の出しにくい材料でした。
その後、シックハウス対策、そして、自然素材のブームもあって、次第に珪藻土もだいぶ身近な材料になってきました。また、後継者育成に力を入れる左官業者にとって、珪藻土は救世主たる存在になりました。いまどき、珪藻土が塗れない左官業者ではお話にならない時代です。

珪藻土とは多孔質の材料で、ビニールクロスと違って、調湿性や保温性がある塗り壁材です。近年の自然素材ブームの一翼を担った材料と言えるでしょう。無垢材との組み合わせで相性もよく、飽きが来ないという声も多く、また、とても汚れにくい特質を持っています(手が触れやすいスイッチ廻りは汚れやすいです)。壁の割れの対策も下地処理を十分に行うことで解消がほぼ可能です。

ただ、珪藻土は珪藻土そのものには接着能力がなく、バラバラな状態なので、塗り壁材として活用するためには、固化材が必要になります。この固化材として、消石灰、樹脂などが使用されます。
ここで注意が必要なのが、固化材として、樹脂を使用した場合です。樹脂を珪藻土という多孔質の材料に混ぜると、折角の多孔質が塞がれてしまい、調湿性を著しく損ねる原因となります。これでは、珪藻土という土を壁に塗っているだけで、機能的には問題が多いと言っていいでしょう。店舗など意匠性を優先する場合であれば、使用しても差し支えないないという考え方もありでしょうが、機能性が大きく要求される住宅には不向きであると思います。固化材にアクリル系の樹脂が使用されるケースは意外と多いようです。

だいぶ、珪藻土メーカーも淘汰されたように思いますが、珪藻土をほんの少ししか混ぜない粗悪品もまだあるようですので、珪藻土の選定にあたっては、信頼のおける建築士に相談するなどして、十分に注意を払うことをお勧めいたします。また既存のビニールクロスのうえに珪藻土を塗ることも可能だったり、出来映えは保証できませんが、既に水が混ぜてある調合済の珪藻土でお客様自身が塗ることを想定した製品もあるようです。リフォームにも最適な材料だと言えるでしょう。

ただ、イニシャルコストとして、珪藻土はビニールクロス貼の3倍はしますので、コスト管理には注意が必要です。ただ、私見としては、長いスパンで考慮すれば、決して安くはないにしても、高過ぎることのない材料であるとは思います。優れた機能性は捨てがたいのではないかと考えています。

珪藻土の施工例の画像です。



カテゴリ:建築素材・材料 2010年6月28日(月)
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