カレンダーカテゴリすべて(435)当設計事務所の姿勢・信条(31)建築雑感(24)建築知識(22)建築構造・性能(17)建築文化・伝統(27)建築素材・材料(29)住宅・建築業界(18)建築設備(5)設計者の日常(33)工事監理・現場紹介(12)お知らせ・ご挨拶(23)建築士会での活動・広報(18)東日本大震災・竜巻・災害(21)東北・北海道の町並み・建築探訪(11)栃木県の町並み・建築探訪(14)関東の町並み・建築探訪(14)甲信越の町並み・建築探訪(1)京都の町並み・建築探訪(21)西日本の町並み・建築探訪(4)茨城県北の町並み・建築・施設探訪・自然・文化(13)茨城県央の町並み・建築・施設探訪・自然・文化(30)茨城県西の町並み・建築・施設探訪・自然・文化(8)茨城県南の町並み・建築・施設探訪・自然・文化(34)茨城県鹿行の町並み・建築・施設探訪・自然・文化(5)最新記事アーカイブ
mail@nagai-sekkei.com
茨城県を中心として
活動している 設計事務所です。
対応エリア
水戸・ひたちなか・那珂・
|
設計者の想いの日々(ブログ)社会貢献と設計事務所
20代~30代前半にかけては雇われる身に立場を置き、建築の仕事に人一倍邁進していたと思います。この世界で、今後、独立して、やっていけるのだろうかと絶えず不安を抱えていましたので、ハウスメーカー時代は要望のとても多いお客様を率先して担当し、設計事務所勤務時代は経営者の立場から見れば、採算度外視だと愚痴られるほど、設計監理業務に全力を注いで仕事をしてきたと自負しています。
そんな時代を現在、振り返って、決定的に足りなかったことがあります。それは建築の世界を超えた社会人としての教養の無さ、仕事に邁進し過ぎがために利己主義に陥ったことなどが挙げられると思います。 建築の世界以外のことで、「永井さんはどんな花が好き?」とある人に質問されても、「花なんて関係ねえよ」という精神的余裕の無さですから、教養が無く、利己主義に陥ってしまう状態になるのも、やむをえなかったのでしょう。 このような高度成長に走ったがゆえのひずみに、やっと気がついたのは独立して数年経過した、ここ2~3年のことだと思います。 話はさかのぼり、20年以上前の学生時代の頃の話です。その頃は伝統的な文学や哲学書などを読み耽り、大酒を飲んではクダを巻いて、議論を吹っかけては、友人を困らせたものです。そんな机上の空論にも次第に飽き、人に偉そうなことを言って悦に入っているくらいなら、実際に物を造っていたほうがはるかに充実する人生なのではないかと思い始めました。世は当時、バブル絶頂で、仕事はいくらでもありました。そんなこんなで建築業界に入って、昼も夜も一生懸命働いて、無事、一級建築士を取得し、苦心惨憺の末、設計事務所を独立するに至ったわけです。 独立後、やや精神的な余裕も生まれ、学生時代読んだ伝統的な文学や哲学書を改めて読み返してみて気がついたことがあります。建築も文学も哲学も人間の生活に密着した分野だということです。物を書くのも物を造るのも、人間の生活についてを前提にしているわけで、相通じるものがあるのではないかと思い始めました。例えば、伝統的な日本建築と日本文学の共通性は谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」に最も明瞭に現れています。 このあたりから日本の伝統の探求が始まりました。茶道を習うことで、当時の茶室建築や「茶の湯」の精神性を勉強したり、華道を習うことで、花の美しさを感じる心の余裕を持って、「生け花」の空間の「間」の生かし方を建築に応用できないものかと考えたりするわけです。 やっとですが、建築士の領域を超えて、社会人としての教養を身に付けたり、お客様をもてなす心を茶道から学んで、利己主義から脱する努力ができるような位置に立てたと思います。 そして、これから将来生きていくうえでのテーマとして、日本の伝統を守ることを主眼に置いて、建築士として、また一人の社会人として、「社会貢献」をしていくことが重要になってくるのではないかと思います。まだまだ、「設計事務所」の現状での仕事と「社会貢献」は乖離しているかもしれません。 しかし、学生時代の読書生活と20代~30代前半の猛烈な仕事の生活が現在になって少しずつ融合しつつあるように、「社会貢献」と「設計事務所」の運営が渾然一体となるような努力をこれから推進すべきではないかと思います。それはいわゆる「設計事務所」の範疇を超える部分もあるかもしれませんが、これが私の人生の指針であると現在は考えています。
|