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設計者の想いの日々(ブログ)数寄屋造りの家
数寄屋造りの建築物は千利休の頃の茶室を起源とするものから発展した建築様式で、その歴史は400年に及びます。
古い歴史的な茶室や贅を凝らした伝統的な様式美を真似することが数寄屋造りであるという誤解がどうも世間には生じていて、「最低でも坪80~100万はかかる、否、200万以上出さなければ本数寄屋とは言えない、京都の北山杉を使ってこそ数寄屋だ」というような薀蓄がまかり通っていますが、それは全て嘘八百であります。数寄屋造りとは伝統的な様式美に耽溺するものでなく、決して固定化されない、もっとフレキシブルなものであります。 伝統文化の一つである華道は、最大流派で550年の歴史を持つ「池坊」において、伝統と格式が重んじられているのは決して間違いではありませんが、この550年の「池坊」の伝統というものは新しいものが次から次へと生まれることによって造り上げられてきたものであって、伝統の様式美に耽溺するだけで終わっていたら、既に「池坊」は現代には無かったことでしょう。 前置きはこの辺にしておいて、私の考える数寄屋造りの定義をまとめてみました。 ①四季の変化に富んだ日本の伝統的な風土を尊重してその精神性を引き継いでいること ②畳敷きのある和室と床の間があること ③屋根の庇を深くし、自然の光を採り込みながらも内部の空間に陰翳と静謐さをもたらすこと ④ハウスメーカーやビルダーによって商品化されることなどの要因により自由闊達さが失われてしまっていないこと ⑤外部的にも内部的にも自然との共生を図れること ⑥虚飾を排し、飽きのこない経年変化を楽しむ造りとすること 以上の要素を満たせば、数寄屋の建築物を設計することができると私は考えています。 数寄屋の起源と言われる千利休の頃の茶室は、当時何処でも手に入った材料で造られています。屋根は藁葺き、壁は土壁で荒壁のまま、床柱はその辺にいくらでもあった無価値に等しい曲がりくねった雑木で、当時の贅沢品は一切使われていません。茶の湯の大成者として千利休は、何も削るものがないところまで無駄を省いて、茶室に緊張感を作り出し、意匠的には自由闊達であり、「にじり口」を考案しました。 このような千利休の精神性は、伝統の様式美に耽溺して「本数寄屋造りは坪云百万」也という現代の薀蓄と相容れないことは言うまでもありません。 物質は貧しくても、自由闊達な精神性を忘れず、心は豊かに持ち、お客様を「一期一会」の精神でもてなせる空間こそが「数寄屋造り」の原点であると私は考えています。 長くなりましたので、「数寄屋」の話はまた別の機会に別の視点でお話したいと思います。
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