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設計者の想いの日々(ブログ)近代建築の呪縛から脱して
「過去のものといえども、真に価値あるものは、常に新しさを含んでいる。」
大正から昭和にかけて活躍した思想家・美学者・宗教哲学者である柳宗悦の言葉です。 ここ最近、私自身、歴史的建造物や旧い街並みを見て回り、その成果として、ブログに取り上げているのは、「旧きものからの刺激・発見」が夥しい状況にあるからです。 「"新しさ"ばかりを追求するのは、商品の生産者にすぎない。」 イタリアのデザインの巨匠であるエンツォ・マーリが述べる通り、私自身、例えば、商品的な住宅展示場や自称建築家の先鋭的?作品から刺激を得ることは、現時点で殆どありません。また近代合理性を重んじたビルディングからもインスプレーションを受けることも殆どありません。 そもそも「近代建築」は、鉄・コンクリート・ガラスの三大材料により発展を遂げ、無国籍ともいえる「白い豆腐のような箱」と揶揄される建築物を量産し続けました 。それを普遍的で美しくシンプル若しくはダイナミックなデザインと称し、地域性、固有の文化を蔑ろにしてきたのが「近代建築」の実態です。 確かに、「近代建築」の発展により、ヨーロッパを例に挙げれば、ゴシック・ルネサンス・バロックなどの様式や宗教の権威から解き放たれ、構造的にも石造・レンガ造から離れて、自由に発想できるようになったのは確かです。(その後ポストモダンなる潮流もありましたが、近代建築の域から出たとは言えないでしょう。) ただ日本人としての私自身の考え方としては、「創造性は制約から生まれる」と考えています。地域性、日本の伝統文化を蔑ろにすることを「自由」と履き違えような考え方を持つことは出来ません。 話は少々ずれますが、いわゆる現在の「グローバルスタンダード」と呼ばれるものが、人類の数々の虐殺の歴史のうえに成り立ってきた側面は否定できないと思います。もちろん人間に対する虐殺・搾取だけではなく、固有の文化への軽視・冒涜、宗教弾圧、自然環境に対する破壊も広義的には虐殺に含まれます。また「グローバルスタンダード」も「近代建築」もその根源は相通ずるものであることを我々建築に携わる人間は決して忘れてならないのです。 かと言って、歴史的建造物を視察して刺激を受けたから、その時代に戻る、あるいはその当時そのままを真似しようとも思っていません。やはり時代背景が違いますからね…。また、「温故知新」という言葉に酔って終わりたくもありません。 「語るよりも造れ」というドイツの作家・ゲーテの言う通り、実際に形にしていくことが何より大事であると、現在の私は考えている次第です。
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