設計者の想いの日々(ブログ)
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神栖市小学校耐震診断業務偽装事件を考える

神栖市の小学校の耐震診断で、委託された水戸の設計事務所が構造計算・診断業務を全く行っていないにもかかわらず、書類を偽造して市に提出していた事件が先月、発覚しました。
渦中の事務所は、天(あま)建築設計事務所で、管理建築士である天茂彦氏は、私の高校の先輩に当たります。優しく、神経の細やかな紳士という印象でした。
天茂彦氏は次のように述べています。
「担当所員が構造計算のできる1級建築士を探したが期限までに見つからず、(偽造を)やってしまった。担当所員は解雇した。所員の不正に気付けず、申し訳ない」

ただ一言…唖然です。
経営者として、管理建築士として、全く同情の余地がないコメントです。残酷な言い方で申し訳ありませんが、天茂彦氏は、担当所員が不正を行っているのを知っていながら見過ごしていたのではないかとしか、私には思えないのです。百歩譲って、天茂彦氏が本当に全く知らなかったとしたら、経営者として、管理建築士として、責任を放棄していたということになります。例えが良くないかもしれませんが、幼い子の母親が育児放棄をして不倫を繰り返すことと同罪です。
当然のことですが、刑事上の責任はその担当所員よりも管理建築士である天茂彦氏のほうが重くなります。

鉄骨造や鉄筋コンクリ-ト造などの構造計算の出来る構造設計事務所は、現在、非常に数が少なく、今後もさらに減少するだろうと言われています。そのような状況の中で、構造事務所の手配もつけずに、耐震診断業務を引き受けてしまったことは、重大な経営判断の誤りです。
百歩譲って、担当所員に構造事務所を探させるつもりだったのはいいとしても、なぜ、構造事務所への発注金額すら確認出来なかったのか、また業務が終わったなら、構造事務所への支払もあるはずであるし、市に診断結果を提出する前に、その内容を審査する第三者機関「茨城県建築センター」への審査費用の支払も少なくない金額です。このような金の流れも把握できずに、事務所の経営が本当に出来たというのでしょうか?

いずれにしても、今回の事件により、またもや、建築士としての信用は失墜したのは事実です。時計の針を逆戻しにすることも出来ません。いずれ天茂彦氏は建築士の免許は剥奪され、刑に裁かれることになるでしょう。一歩油断すれば自身も、天茂彦氏の二の舞になりかねないことを教訓とし、建築士の社会的信用を取り戻すべく、日々の業務に勤しんでいきたいと考えています。
カテゴリ:住宅・建築業界 2013年9月16日(月)
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