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設計者の想いの日々(ブログ)建築素材・材料ふすま紙を金箔・銀箔入りの西ノ内和紙に貼り替える金箔、銀箔入りの西ノ内和紙に襖の模様替えです。銀箔は次第に黒く変化してきます。キラキラした嫌らしさはなく、上品な仕上がりです。西ノ内和紙は那須楮で出来た手漉きの和紙で、今回は天日干しにより仕上げ、納期約2週間です。
柿渋で塗装する
柿渋は平安末期から続く伝統的な自然素材で、青柿の実を絞ってできた果汁を3年以上寝かせ発酵させたものです。防水性・防腐性・防虫性に優れた柿渋を桶、樽、団扇(うちわ)、番傘、酒袋、投網、漆器の下塗り、一般的な木部に塗装する、あるいは染料として活用する、民間治療薬などに使用するなど、北海道などの寒冷地を除き、全国各地で行われていました。
戦後、化学塗料の普及により、柿渋の生産は減少の一途を辿りますが、最近は自然素材の安全性が見直されて、再び注目を浴びています。 柿渋は塗り始めの頃は無色透明に近いですが、少しずつ色が付き始め、次第に明るい茶色になります。 色合わせとして、松煙(黒系)やベンガラ(赤系)などの自然素材を混ぜることで、様々な色を作り出すことができます。 柿渋の塗り始めの頃は銀杏のような臭いがするため(次第に臭いは無くなります)、それを嫌う方も多かったのですが、現在は柿渋の無臭化に成功しています。 柿渋のような自然塗料は、現在の化学塗料と比較すると、特に外部については、耐久性に劣りますので、足場がないと塗れないような部分にはお勧めできません。メンテナンスが容易である建築物の腰壁部分、あるいは板塀には適しているかとは思います。また柿渋は誰にでも塗りやすい塗料です。 そして、日本の伝統色を表現するには最も適した塗料の一つです。 柿渋に松煙・ベンガラを混ぜて板塀に塗装した例
プラネットウォール(ドイツ漆喰)
「プラネットウォール」は自然素材の先進国であるドイツ製の漆喰で、左官ではなく、ローラーで仕上げることが出来ます。
「コバウ」という調湿性のある強靭な紙を貼ってから、漆喰をローラーで塗っていきます。 「コバウ」という強靭な紙を貼ることで、漆喰が非常に割れにくくなっています。 「プラネットウォール」はビニールクロスと左官工事の中間に位置するお求めやすい価格帯となっています(但し小面積の場合は割高です) 色のバリエーションも白に限るものではありません。 作業工程は以下の通りです。 ①石膏ボードが貼り終わったら、クロスと同様に、継ぎ目やビス穴をパテで処理していきます。(画像はパテ処理前の状態です) ②「コバウ」という調湿性のある強靭な白い紙を貼っていきます。また漆喰を塗る前に木部等をビニールで養生して汚れないようにします。 ③漆喰をローラーで塗って完成です。
壁に手漉きの和紙(西ノ内和紙)を貼る
国と茨城の無形文化財に指定されている手漉き和紙である「西ノ内和紙」を壁に貼ってみました。「西ノ内和紙」は江戸時代、水戸藩の専売品だった歴史を持ち、強靭で長持ちする和紙として知られています。
また、ビニールクロスのように経年劣化していく素材ではなく、時が経るにつれて「経年変化」によって味わいが深まる素材です。 現在、和紙の生産は機械漉きで行われることも多く、手漉きで行われることはかなり少なくなりました。また手漉き和紙を貼ることが出来る職人も非常に少ないのが現状です。 今回は手漉き和紙を壁に貼る工程を整理してみました。 ①石膏ボードの継ぎ目及びビス穴をパテで処理します。 ②パテ処理後、下張り用の西ノ内和紙(600×900㎜)をでんぷん糊で壁に貼っていきます。 ③仕上げ用の西ノ内和紙(600×900㎜)をでんぷん糊で壁に千鳥で貼っていきます。和紙と和紙のジョイントは重ね貼りで仕上げます。 完成写真です。壁だけでなく、ふすま紙、障子紙も西ノ内和紙です。 今回使用した西ノ内和紙の拡大写真です。 西ノ内和紙のような本物の材料を貼っていくには、ビニールクロスの約5倍の材料代及び工事費を要します。決して安くはありません。 けれども、「経年劣化」著しいビニールクロスよりも、「経年変化」により味わい深くなる西ノ内和紙を選択することは、長い目で見れば、決して高いものではないだろうかと私自身考える次第です。
カルクウォール~スイス漆喰
カルクウォールとはスイス製の漆喰です。その主成分は日本の漆喰と同様、消石灰です。
日本の漆喰は主成分の消石灰に加えて、角又(つのまた)などの海藻を接着剤として、麻すさを壁の補強・亀裂防止の役目として使用しています。 スイスの漆喰は植物でんぷんを接着剤として、ブナセルロース繊維を壁の補強・亀裂防止の役目として使用しています。 漆喰はスイス製でも日本製でも、接着剤・壁の補強・亀裂防止の役目の成分の違いこそあれ、その製法の考え方は同じと言っていいでしょう。 但し、現状の日本の漆喰の既調合品(袋詰め品)は化学成分である樹脂が混ざっていることが殆どであり、厳密には自然素材と呼ぶことは出来ませんが、スイス製のカルクウォールは昔ながらの製法を守っています。 ただ、このカルクウォールを使用するに当たっては注意が必要です。 まず風雨及び凍害により壁の剥落が発生しやすいことです。それを防ぐ手立てとして、屋根の軒の出を大きく取ること、つまり庇を大きくすることです。また風雨の晒されやすい下部の壁(腰壁)を漆喰でなく無垢材で仕上げる等の対策を取ることです。腰壁をつけることで汚れ対策にもなります。 外壁をカルクウォール、腰壁を無垢材で仕上げた例 日本の伝統建築では漆喰が多用されていますが、必ず下部の壁は漆喰でなく、無垢材やなまこ壁などで仕上げられ、また屋根の軒の出も大きく確保しているかと思います。 そうする理由はカルクウォールと同様、風雨・凍害による壁の剥落を防ぎ、また防汚対策のためです。 したがって、現在多く見受けられる、軒の出ゼロに近い、また腰壁もないような現代風の建物にカルクウォールのような漆喰を使用することはお勧めすることは出来ません。 カルクウォールを内装の壁に仕上げた例 カルクウォールの場合、パターン仕上げが主流で、それが安価に仕上げる方法です。次の画像はパターン仕上げの一部です。 本当は日本の漆喰を使用したいところですが、前述通り、樹脂などの混ざり物が多いため、自然素材にこだわる既製品を使用するならば、現在でも自然素材の製法に忠実なヨーロッパ製品を使用しざるをえないのが現状です。 どうしても日本の漆喰にこだわるならば、高価になりますが、以前ブログで取り上げた既製品を使用しない、現場で調合する本漆喰ということになります。
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