設計者の想いの日々(ブログ)
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永井昭夫
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設計者の想いの日々(ブログ)

建築文化・伝統

文化財を保存維持管理していくために

先週のニュースです。
「文化審議会(宮田亮平会長)は14日、戦後復興の象徴で、高度経済成長の原点としても親しまれている東京タワー(東京都港区)など建造物126件を新たに登録有形文化財に登録するよう、田中真紀子文部科学相に答申した。近く答申通り登録される見通しで、同文化財は9262件となる。」

後世に伝えうる歴史的建造物を文化財に指定及び登録して、保存・維持・管理していくことは非常に大事なことだと私は考えています。
けれども、文化財となれば、そうそう壊すことは出来ません。
そして、職人の技能不足により、いずれ文化財のメンテナンスが出来ない時代が否応なくやってきようとしています。
例えば、茨城県石岡市に多く残されている、近代建築の商店施設に掲載されているような、昭和初期時代に建てられた商店建築の登録文化財の数々は、建築物の乾式化・機械化に伴う左官業者の熟練工の激減で、今後の修復工事の行く先が危ぶまれています。

40~50%の粗利を追求する日本特有のシステムである「ハウスメーカー・ビルダー」が、職人・技術者を粗末に扱っている現況を変えていかなければ、文化財の修復はおろか、一般住宅の改修・リフォームすら満足に出来なくなる事態に、近い将来、陥ることになります。決して、時間的な猶予はありません。
もちろん私たちは努力しています。けれども、具体的な打開策を見出すために、現時点で、妙案がないのは事実です。
カテゴリ:建築文化・伝統 2012年12月19日(水)

国産銀杏(いちょう)のまな板

国産銀杏(いちょう)のまな板は、昔から現在に至るまで、プロの板前に、最もよく愛用されています。
また、関東近県では、本職の料理人に限らず、昔は、地場産の銀杏(いちょう)のまな板が多用されていました。

適度な弾力性があり、刃あたりが良く、音がとても心地良く、包丁仕事が疲れにくいというのが使用されている多くの方々の感想です。
皆様が子供の頃、母親が朝食を作っている際、木製のまな板を包丁で叩く心地良い音に気がついて、目が覚めた経験はありませんでしたか?特に銀杏(いちょう)は美しく郷愁ある音を奏でてくれます。

銀杏(いちょう)には、フラボノイドが多く含まれており、抗菌作用に優れ、水切れが良く、まな板には最適の材質です。

国産檜のまな板と比較すると、国産銀杏(いちょう)は、見た目や香りは劣り、価格も倍以上します。
けれども本日の土浦の産業祭で、建築士会が手造りまな板を販売したところ、檜よりも銀杏(いちょう)のほうが、はるかに売れ行きが良く、予想を裏切られました。
ホームセンターのプラスチックのまな板の大量販売が隆盛の昨今ですが、本物を見分ける眼を持つ消費者もまだまだ多いということを痛感させられた次第です。
大資本に負けず、本物にこだわり続け、その普及に努めることも、一介の建築士としての大事な役目なのではないかと、私は考えています。
カテゴリ:建築文化・伝統 2012年10月20日(土)

矢口家住宅修復工事

東日本大震災で大きく損壊した茨城県指定文化財である「矢口家住宅(矢口酒店・土浦市)」の修復工事が始まりました。
矢口家住宅は、1849年から1867年の江戸時代末期に建てられ、茨城県内に現存する土蔵造りの商家建築の中でも、屋敷全体が土蔵造りになっていて、家相図も残るなど、特に貴重な有形文化財です。
修復工事は今年から約4年間かけて行われ、総事業費は約2億1750万円。今年度の工事は、店蔵・袖蔵・元蔵・米蔵のうち、元蔵の土壁の塗り直し、屋根瓦の葺き替えが予定されています。
今日は、建築士会主催で、その修復工事の第一回目の見学会が行われました。次回の見学会は12月1日の見込です。次回からは、建築士会員以外の参加者枠も若干数ですが、設ける予定です。


土壁の剥落、屋根の瓦の損傷が激しく、外壁・屋根は全て剥がし、構造体だけの裸の状態にしてから、元の状態に復元していきます。


ビニールシートで養生してあるのでわかりにくいですが、江戸時代から現存する金庫です。かつては、常陽銀行の前身の銀行の金庫としても使用されていました。
カテゴリ:建築文化・伝統 2012年10月13日(土)

六角堂再建への異議申し立て(続き)

六角堂の再建に関わる使用木材の件について、茨城県建築士会専務理事兼事務局長の加藤繁治さんより文書で昨日、回答がありました。新聞の記事と異なる点もあり、そのまま引用します。

「六角堂再建の使用木材のことですが、実は昨年の11月に伐採し、2ヶ月間現地で葉枯らし乾燥を行いました。
1月17日、所定の長さにして切り出し、現在、北茨城市五浦で現地で馴染ませる自然乾燥を行っています。
ここで、約1ヶ月間自然乾燥を行い、その後、機械乾燥を行うと茨城大学から聞いております。
従って、3月末までに完成することはできないと思います。
建築士会は、再建設計づくりのお手伝いをしましたが、現在は、工事が発注されて請負者の松井建設と茨城大学の間で工事が進められております。」


本日、別件もあり、建築士会本部にお伺いし、事務局長の加藤さんとお話しました。発注元の茨城大学の意向として、5月の連休前には、六角堂の再建を終えたいということ、もう一点、生誕150年を迎える岡倉天心と同じ樹齢150年のいわき市のスギ(新聞で伐採の様子が報道されたもの)を是非使用したいとのことでした。

ここで、原木の伐採から竣工までの流れを検証していきたいと思います。
まず、原木を伐採後、葉枯らし乾燥をしたということですが、冬場の葉枯らし乾燥期間として、最低3~4ヶ月は要すると想定されますが、今回の乾燥期間は2ヶ月程度です。
葉枯らし乾燥とは、伐倒後枝葉を付けたまま、山に寝かせて、葉が黄変もしくは赤変するまで自然乾燥させることです。果たして、今回、約2ヶ月で葉が変色・枯れるまで、乾燥させたのか、疑問が残ります。
葉枯らし乾燥後、北茨城に運搬し、自然乾燥で現地の気候に馴染ませる、これは非常にいいことだと思います。ただ、期間が一ヶ月と短すぎます。
問題となるのは、その後の過程です。つまり、機械乾燥をかけてしまうということです。前回、申し上げた通り、人工機械乾燥の釜に材木を入れると、材木の持つ脂身が失われ、内部割れを引き起こし、強度の低下をもたらします。また大工の手刻みが多く必要とされる建物において、人工乾燥の木材では、粘りがないので、手刻みでは弾き易く、欠けてしまうこともあるわけです。つまり、神社仏閣などの類のプレカット(自動製材)の出来ない建物では、天然乾燥の材木を使用するのが常識なのです。

復興を急ぐ気持ちは非常にわかります。ただ建築物の品質を落としてまで、国の文化財の再建を急ぐ是非を、私は問いかけたいのです。
建築物の品質を落とすこと、これは、つまり、世間で糾弾されている手抜き工事です。発注者が急いでいるからと言って、本当に建築物の品質を落としていいのでしょうか。
建築のプロとして、発注者サイドを根気強く説得すべきなのに、それが出来ないのは、建築士としての職務を放棄しているようなものなのではないでしょうか。
手抜き工事は、大人の諸事情で行われることが非常に多いわけですが、今回のケースはその典型例であると、私自身は捉えています。
カテゴリ:建築文化・伝統 2012年1月31日(火)

六角堂再建への異議申し立て

東日本大震災の津波で流失した岡倉天心ゆかりの国登録有形文化財「茨城大学五浦美術研究所六角堂」(茨城県北茨城市大津町)の再建を目指す茨城大は、福島県いわき市の山林から建設資材となる杉の原木を搬出し、目標とする3月中の再建へ一歩前進した。一方、原木を寄付した男性は「売れない木がお役に立つなら名誉なこと」と笑顔を見せた。「茨城の復興のシンボルに」と関係者の期待も大きい六角堂再建。プロジェクトが本格的に動き出した。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120122/dst12012207000003-n1.htm

さて、この記事、震災復興に向けての前向きな内容であると大多数の方々は思っているかと思います。ここで注意しなければいけないのは、建築資材となる原木の伐採が今年1月中旬であること、再建される六角堂の竣工が今年3月いっぱいであることです。つまり、原木を乾燥させるための期間があまりにも短いのです。原木から製材されて、どんな短くとも半年は乾燥期間が必要なのにもかかわらず、この記事を読む限りは、たった2週間です。管理元である茨城大に、茨城県建築士会が協力して再建に当たっているということですが、国の文化財を再建するにあたって、工事があまりも杜撰であると言っていいでしょう。
技術の進歩に伴い、人工乾燥という手立てがあるのではないかという意見もあることでしょう。確かに人工乾燥の釜に入れれば、含水率を下げることも出来ますが、木の持つ脂身まで失うこととなり、木材の内部の割れが生じるなど、多くの問題を抱えます。また大工の手刻みが多く必要とされる神社仏閣の建物において、人工乾燥の木材では、粘りがないので、手刻みでは弾き易く、欠けてしまうことがあり、固くパサパサな状態の木材を刻むのは非常な困難な状態になります。
まともな建築関係者であれば、こんなことは常識なはずですが、それを3月中に竣工という強硬手段を取るのは、茨大もしくは茨城県建築士会に、「まず工期ありき、復興ありき、品質はどうでも良い」という考え方が根底にあるのではないでしょうか。私も茨城県建築士会の会員の一人として、非常に恥ずかしく思っています。
カテゴリ:建築文化・伝統 2012年1月28日(土)
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