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設計者の想いの日々(ブログ)建築文化・伝統被災した歴史的建造物を次代へ継承していくために
茨城県建築士会まちづくり委員長 梶ひろみさん
「文化的価値の高い建造物を次の世代に残していくことは建築に携わる者の使命。震災で改修されず、消えようとしている建物を救いたい」 「古い建物は、まちのアイデンティティであり、記憶のよりどころだと思う。ゆかりのある建物があるから、人はまちに愛着を抱き、『また戻ってこよう』という気持ちになる」 (茨城新聞・2014年3月13日) 後世に伝えうる歴史的建造物を保存・維持・活用していくことは非常に大事なことであると私自身も考えています。その具体的な実現のために、2012年度より茨城県建築士会では、「いばらき地域文化財専門技術者(ヘリテージマネージャー)」の養成が始まりました。 私自身も、梶ひろみさんと同様、ヘリテージマネージャーの一人となって活動しております。 ただ、以前にもこのブログで書いたこともあるかと思いますが、解決していかなければならない問題が山積しているのも否めない事実です。
矢口家住宅修復工事H25年10月
ここ最近、県の指定文化財である矢口家住宅(土浦市中央・中城通り沿い)の修復工事の見学を何回か、させて頂いています。
昔ながらの伝統工法で修復されており、現在では、そんな現場もなかなか見る機会がなくなりました。 土壁下地の竹小舞が組まれています。竹は真竹です。 内部の間仕切壁の下地の竹は半割りで使用、外部は割らずに真物を使用します。外部と内部では、土壁の塗り方が違うようです。高価ですが丈夫な棕櫚縄で竹を縛っています。 茨城県産の土に藁を混ぜて練っていきます。 土壁はまずは荒壁で仕上げ、次に中塗りを行い、最後に漆喰壁で仕上げます。 現在は荒壁が塗られている段階です。 矢口様から頂いた震災前のひな祭りの際の画像です。黒い外壁と赤いひな壇が見事に調和していますね。
伝統工法による蔵の改修工事が始まります
104棟の登録文化財を有する「重要伝統的建造物群保存地区」である桜川市真壁地区では、東日本大震災により、沢山の古い建物が大きな損傷を受けました。
桜川市真壁地区では「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されていることもあり、国から補助金を受けて、現在、災害復旧工事が急ピッチで進められています。 原則的に伝統工法で工事を行い、竹小舞の下地を組んで、昔ながらの土壁によって改修します。 従って、工期は現在の工法と比較にならないほど長く、1年半~2年かかります。 今回の「蔵」の改修工事の進捗状況については、工事監理者の立場として、随時、ブログで掲載していきたいと考えています。今年9月からの着工の予定です。
いばらき地域文化財専門技術者
「いばらき地域文化財専門技術者」とは、茨城県建築士会の研修を修了し、歴史的建造物等の保全や活用を通じ地域活性化に貢献することを目的として活動する建築士のことで、私もその一人となっています。別称、「ヘリテージマネージャー」とも呼びます。
その主な活動内容として、 1.歴史的建造物の調査を通じた建物の価値の発見 2.歴史的建造物の保存活用についての提案 3.文化財の修理や保全に関する技術支援 4.災害発生時の被災文化財の調査や技術支援 1995年の阪神・淡路大震災後、歴史的建造物、地域に多量に存する歴史文化遺産の保全が課題となり、兵庫県で、ひょうごヘリテージ機構が発足したのが始まりです。 茨城県においても、東日本大震災で、多くの歴史的建造物が被災し、その保全・活用のための技術者の育成が急務ということで、平成24年度より、茨城県建築士会主催で、茨城県教育委員会の支援を受けながら、歴史的建造物の修理技術や活用手法・歴史文化遺産を活かしたまちづくり等に関する講習を行う「いばらき地域文化財専門技術者育成研修」がスタートしました。 茨城県内においては、歴史的建造物の保全・活用のための活動について、地域間の格差が激しいのが現状です。 常陸太田市・土浦市・石岡市などでは、数多くの歴史的建造物を抱えながら、震災後、既に解体されてしまったり、今後も解体の危機に瀕している建造物が多く存在します。 大震災直後の建築士の応急危険度判定により、赤紙を貼られた歴史的建造物の所有者が、専門家から適切なアドバイスを受けることが出来ずに解体してしまったケース、修復工事の費用を捻出することが出来ず、やむなく解体せざるをえなくなったケースなど様々ですが、歴史的建造物の保全・活用等の提案・調整を行うヘリテージマネージャーが不在であったことも、そのような結果となった一つの要因ではないでしょうか。 「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、地域文化財専門技術者が多く存在する桜川市真壁地区からは学ぶことは多く、そのノウハウを他地域にいかに導入していくかが課題となるとは思います。 但し、高齢化・単世帯化・中心市街地空洞化が進んでいる現在、大きな損傷を受けた歴史的建造物を所有者が修復する余力がないのも現実であり、「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されているため、修復工事に補助金が大量に投入されている桜川市真壁地区と単純に比較することは出来ないでしょう。 地域文化財専門技術者(ヘリテージマネージャー)が所有者に対して、「経済性」と「建造物の構造上の安全性」を両立させる修復工事の提案をすることは決して簡単なことではありません。 このような情勢のなかでも、私自身、「いばらき地域文化財専門技術者(ヘリテージマネージャー)」の一人として、試行錯誤を繰り返しながらも、積極的な活動を行っていきたいと考える次第です。
伝統的な屋根葺工法
檜皮葺(ひわだぶき)・鹿島神宮本殿(茨城県鹿嶋市)・国指定重要文化財~現在工事中
檜皮葺(ひわだぶき)とは、屋根葺手法の一つで、樹齢70年以上の充分な樹径のある檜の樹皮を用いて施工する、 日本古来から伝わる格式高い伝統的手法で、世界に類を見ない日本独自の屋根工法です。通常は長さ75センチ程度にそろえた檜皮を少しずつずらしながら重ねていき、竹くぎで留めます。優美な傾斜の曲線が現れる、この工法の出来る業者は、現在の日本では、五つもないという状況です。この工法は約千数百年の歴史を有します。 檜皮葺(ひわだぶき)を接写した様子です。幾層にも檜皮(ひわだ)が積み重ねされています。 檜皮(ひわだ)で葺かれた鹿島神宮仮殿(国指定重要文化財) 椎名家住宅(茨城県かすみがうら市)・国指定重要文化財 檜皮葺(ひわだぶき)よりは庶民的な茅葺(かやぶき)屋根です。 茅葺(かやぶき)は世界各地でもっとも原始的な屋根とされ、日本でも縄文時代には茅を用いた屋根だけの住居が作られていたと考えられています。茅(かや)は「ススキ」の別名で、「萱」とも書きます。20世紀半ばまで、日本各地の山間部の農村に茅葺の屋根が数多く残されていましたが、現在では、新築に使われることがほとんど無くなりました。世界遺産に登録されている岐阜県の「白川郷・五箇山の合掌造り集落」は茅葺屋根です。 椎名家住宅の建物内部の様子 建物の内部で竈(かまど)や囲炉裏を使用すると煙で燻されることによって、茅葺屋根の耐久性が高められます。
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