設計者の想いの日々(ブログ)
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構造材のプレカット加工の功罪

木造の建物の構造体、つまり、柱・梁・土台などを加工する作業は、プレカット工場と呼ばれるところで、最新鋭の機械で加工されるケースが、現在では90%を超えるまでになりました。ハウスメーカー・ビルダーを中心に、経済性・効率性を追求する時代の流れに逆らえることが出来ないということもあって、プレカット工場は、ここ10~20年で、一気に普及するに至りました。
機械が加工するのですから、加工精度もあり、悪いことは何一つないように考えられているのが一般的だと思います。
ところが、加工する柱・梁・土台などの材料は、人間と同じで、癖があります。木の目や木の癖を見極めずに、工場の生産ラインで次々と加工してしまうことには大きな落とし穴があります。木材は、「反り」「ねじれ」などの狂い避けられない扱いの難しい材料です。しかし、適材適所に木材を使用することで、建物の構造体としての不具合を無くし、より長持ちするような建物にすることが可能です。それが日本の伝統技術というものでした。けれども、プレカット工場では、このような木材の特性を生かしきることは至難の業です。
そこで、木材の癖を極力無くすために、木材を人工乾燥させ、狂いのない材料にするようなことが行われます。この人工乾燥は、木材の水分を減らすことで、狂わない材料にすることを目的にしています。ところが、この人工乾燥は、水分を減らすだけでなく、木材の脂身まで減らしてしまうので、木材自体の粘りが無くなります。また、乾燥過程で木材の内部割れを起こすため、強度は無くなります。さらに、この人工乾燥に使用する木材は、木の目が荒い強度の低い材料を使用しないと、含水率が下がりにくいため、元々強度の低い材料なのです。
このような加工工程を経た木造住宅が長期優良住宅と称されたりするわけです。

では、一体、このような諸問題を解決するためには、どうすればよいのか?答えは簡単です。昔ながらの大工さんの「手刻み」の作業に原点回帰すればいいのです。
「手刻み」は、熟練の大工が、材料を吟味し、「自然の木の癖」を読みながら、刻んでいき、木材を適材適所に使用します。
話は変わりますが、「適材適所」という言葉は、材木屋から生まれたと言われています。
この「手刻み」を経済性・効率性という名のもとに無くしていけば、「日本の大工の伝統技術」は消滅します。また、この「手刻み」が出来ない大工は、内部の細かい造作工事が乱雑です。
小回りの利かない工業製品に席巻される現在、長い日本の伝統に培われた技術を放棄するような流れに委ねることは、私自身、設計者の一人として許容することができません。伝統技術を持った大工職人が減りつつある昨今、時間的猶予は、無くなりつつあります。
カテゴリ:建築構造・性能 2012年5月30日(水)
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