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設計者の想いの日々(ブログ)建築雑感家を買うという造語を考える
「家を買う」という表現がこの昨今、頻繁に使われるようになりました。建売住宅や中古住宅で、現に存在しているものならば、まだ話はわかるのですが、注文住宅ですら、そのような言い回しがされることがあります。この世のどこにも存在しえない現場加工品である注文住宅を、いったい、どこで、どのようにして、買ってくるのか!?
とても不思議に感じる表現です。 例えば、飲食店を開いたり、福祉施設などを運営するにあたって、建物を新しく建てる場合、そのオーナーさんは、建物を買うという表現を間違ってもしません。建物を造って、事業を経営していくのですから、「建物を買う」という概念は全くありません。 役所でもそうです。公共施設など、買いようがありませんから、多くの市民(国民・町村民)の声や有識者の意見を聴きながら、設計業務を、建築士事務所に委託して、骨格を固めていきます。 このように、住宅以外の建物は、堅実に、少しずつ造り上げて、現実のものにしていくのに対して、なぜ、住宅だけは、「青い鳥」を求めるかのように、「購買」的な要素に振り回されるのか、甚だ、疑問です。 もっと、直截な言い方をしましょう。 「家を買う」という表現は、「日本語」として、成り立っていないのではないでしょうか? この世に存在し得ないものをどのように買うというのでしょうか? それぞれの異なった敷地条件と、建築主であるお客様の百人百様の価値観・美意識・生活設計に基づいて、街並みで生きた家を建てるならば、「家は造る」ものなのです。 「家を買う」という表現は、効率よく「家を売る」ことで、利益を上げたい立場の者が作ったこの数十年の造語に過ぎません。 この世に決して存在し得ないものを、在るかのように見せかけて売る商売から派生した造語で、これ以上、日本の住宅文化やモラルが破壊されていく事態を看過することは、設計者の一人として、できないことです。
常識的な施工業者の選考基準
当設計事務所の原則的な施工業者の選考基準は以下の通りです。常識的な事項ばかりで甚だ恐縮ですが、意外と疎かにしている業者も多いので、敢えて、纏めてみることにいたしました。
①建設業の登録をしていること 建築一式工事1500万円以上の工事を請け負う場合は、建設業法第3条により、建設業者の登録が必要です。現在、一戸建ての住宅の平均価格は2000万を超えていますので、9割以上の一戸建て住宅の新築工事が、建設業登録業者の請け負うべき工事に該当します。 実際には、建設業登録を行わず、1500万以上の建築一式工事を請け負う業者は少なからず存在します。本来、このような業者との請負契約は違法なはずです。けれども、銀行融資の必要書類として、請負契約書を提出するにあたり、このような無登録業者との契約書でも、今まで銀行の融資が通ってきたのが現実です。 但し、2009年10月に施行された住宅瑕疵担保履行法では、住宅の用途に当たる建築物には、瑕疵担保責任を確実に履行するための資力確保措置として、保険加入などが義務づけられました。いわゆる瑕疵担保保険と言われるものですが、この保険には、建設業の無登録者が加入することはできません。 ②工事見積書の明細がはっきりしていること 当設計事務所では、ハウスメーカー・ビルダーが行っている坪単価+オプション価格での見積は、一切認めていません。建設業法第20条では、工事の種別ごとに材料費・労務費・その他経費の内訳を明らかにしなければならないと規定されています。つまり、ハウスメーカー・ビルダーの行う不透明な坪単価見積は、建設業法に抵触しているということです。 工事の種別、つまり、基礎・大工・屋根・板金・外装・左官・タイル・内装・塗装・木製建具・金属建具・仮設工事・給排水・電気・空調工事などの種別に分類して、その工事毎に明細を出すような見積書以外は、当設計事務所では、検討に値しません。 ③出来高以上の請求をしないこと 明細のはっきりした見積書に基づき、工事の出来高を超えるような請求は認めていません。ハウスメーカー・ビルダーなどが出来高の1/3にも満たぬ上棟時以前に、請負金額の7~9割もの請求をすることは決して珍しいことではありませんが、このような不当請求を当設計事務所では認めていません。上棟時以前に請負金額の大半を払い込み、その後、業者の倒産の憂き目にあった消費者は沢山おられます。 ④今後も営業の継続が見込まれること 良好なメンテナンスを行うことで、建築物は長持ちします。 今後、事業の継続が危ぶまれる業者、あるいは数年後に後継者が存在いない業者では、良好な維持管理が期待できません。 ちなみに、建設業者の経営状況は、経営事項審査結果として、ネット上に公表されています。(全ての建設業者が経営事項審査を受けているわけではないです) ⑤過大な営業経費をかけず、堅実に会社を運営していること 過大な営業経費を負担するのは、最終的には消費者です。技術を奮うことよりも、販売を重視する会社では、コストパフォーマンスに優れた建物を提供することは、100%無理です。 ⑥建築主の代理人としての設計者の意図を汲み取ってくれること 無断で図面を変更したりせず、設計者である工事監理者が是正指示を出した場合は、速やかにその指示に従うような社会性や常識を兼ね備えている。 ⑦反社会的勢力がバックに存在していないこと 消費者に知られていないだけで、このような住宅会社は存在します。反社会的勢力の臭いを嗅ぎ取られないよう、イメージ戦略に長けた営業展開を行っている場合もあります。 以上、長々と書き連ねてきましたが、地域に根ざした良心的な工務店・建設会社であれば、全く問題のない事項ばかりです。ただ、派手な宣伝広告を出して営業活動を行う「○○ホーム」や「△△ハウス」と当設計事務所の姿勢とは相容れない部分が多いと思います。けれども、私自身、消費者の利益を保護し、法律を遵守するように努めている、ただ当たり前のことを実行しているに過ぎないのです。
大工の腕の良し悪しを考える
今まで、東京・神奈川・茨城で仕事をしてきた経験上から申し上げると、腕の良い大工が多い地域の順位は以下の通りです。
茨城>>>神奈川>東京 東京・神奈川などの都会と比較して、圧倒的に茨城のような田舎に、腕の良い大工が多い理由としては、まだ和風の化粧造りの家が残されていること、土地が広く、作業場を持つ大工も多いので、自ら加工作業のできる環境があることなどが挙げられると思います。 東京・神奈川時代の頃は、とにかく大工の腕の悪さには泣かされてきましたが、茨城に戻ってからは、そういうことも随分と減りました。 ただ、茨城は田舎ですから、間取り・外観・提案力のようなセンスや社会的教養を、大工にはあまり期待できません。そして、大工が自らの技術の腕を奮うことに頑固さを持ち合わせる分には良いのですが、センスのない分野にまで、頑固さを主張してくるところには辟易します。このような悪しき側面が消費者に見抜かれて、大工が運営する工務店からハウスメーカー・ビルダーのような新参者に仕事が流れているのは紛れもない事実であります。 今まで大工の腕の良し悪しを随分と見てきましたが、腕の悪い大工に、ほぼ共通している特徴があります。 それは、口が達者なことです。 もちろん、口が達者な大工にも腕の良い大工はおりますが、腕が悪い大工には、自称・名人が多いようです。口が上手なので、お客さん受けが良かったりする場合も多いようです。また、腕を奮うより掃除をこまめにすることで、無意識のうちに、粗(アラ)を隠そうとしている深層心理を垣間見ることができます。 現場の掃除が行き届いているからと言って、段取りも行き届いている、すなわち、必ずしも大工の腕が良いというわけでもありません。 腕の悪い大工は今の寒い時期によくわかります。隙間無く納めるところを、それが良く出来ないので、腕の良い大工と比較すると、隙間風が多いせいか、やはり寒いのです。このような下手糞な大工が、ハウスメーカー・ビルダーのような下請になって、高気密・高断熱の家を造っていたりするのですから、世の中、皮肉なものです。 この腕の良し悪しを建築士でも意外と見抜けない者が存在するのは事実で、住宅メーカーの営業マンレベルに至っては、言わずもがなです。 大工は、かつて棟梁と呼ばれていました。今でもそのように呼ぶ地域はもちろんあります。 大工が頭となって、基礎・屋根・板金・内装・左官など、その他各種業者を取りまとめて、お客様との折衝をも行ってきましたが、社会が複雑化し、消費者の価値観が多様化した現在では、ちょっと難しいのではないかと私自身は思います。 ただ、以前にもこのブログで申し上げた通り、大工には若い世代に引き継がなければならない特殊な技術があります。その引継ぎが疎かにならざるをえない時代の流れのなかで、技術の伝達のための環境造りを、設計者の一人として、積極的に行っていく所存であると、重ね重ね、申し上げる次第です。
設計料を考える
たまには自画自賛をしたいと思いますが、寛大なお心でお読み頂けると幸いです。
当設計事務所では、設計料が高いと言われたことがほとんどありません。もっとも、設計料が高いと思われる方からのご依頼が来ないのかもしれませんが・・・。 では、なぜ、お客様に割安感を感じて頂けるのか?あるいは、実際に安くできるのか? それを自画自賛しながらも、冷静に分析してみます。 ①単純に、金額に見合うだけの内容がある。 ②当設計事務所が施工会社の見積書の内容を精査して、お客様の代理となって金額面の交渉をする。つまり、そのことで、工事費の10%に満たない設計料の元を取ることが可能。 ③営業経費をあまりかけていない。 ④受注率が高い(90%以上)ので、受注のための労力を費やしていない。 ⑤当たり前の話ですが、設計料の焦げ付きがない。 ⑥他の会社や事務所が30人分の労力がかかるところを、当設計事務所では数分の一の労力で話が済む。つまり、半年かかってプランがまとまらない案件を、当事務所では、一ヶ月でまとめることも可能。(細かい変更を除いて) などが挙げられると思います。 そして、さらに設計料を安くする方法、いいえ、無料にする方法もあります。 それは、施工会社である工務店や建設会社、あるいはその下請となる協力業者からバックマージン(現玉)を貰うことです。 民間の取引の場合、公共工事と違って、バックマージンを貰ったところで、法に触れることはありません。けれども、この行為はお客様に対する背任行為であって、施主の代理人であるべき設計事務所にとって、許されないことだと思います。ただ、この手の誘いが設計事務所に対して、お客様の陰で横行していることは事実です。 結局、設計と施工の境界がはっきりしていないと、工事金額も不透明でわかりにくくなっていくのが、住宅・建築業界を冷静に鑑みての、私としての実感です。 ハウスメーカー・ビルダーの場合、その境界はありませんので、設計料無料あるいは格安に設定できるわけですが、以前、このブログで申し上げました通り、その見積書ほど、曖昧で不透明なものはありません。 今日はとりとめのない内容となってしまいました。 当設計事務所の業務内容と設計料の目安については、下記に掲載しておりますので、機会がありましたら、お読み頂けると幸いです。 設計・監理料
真壁を考える
この10~20年で「真壁」の部屋が急速に減りました。「真壁」とは構造体である柱を化粧として見せる仕上げ方で、逆に柱を全て隠す壁の仕上げ方を「大壁」と言います。和室と云えば、壁の仕上げ方は「真壁」が一般的でしたが、むしろ、現在は「大壁」が主流となりつつある勢いです。「真壁」仕上げは大工の腕の見せ所であり、「大壁」よりもその技術は大きく問われます。
時代の変遷に伴って、価値観が多様化し、お客様の積極的な選択肢としての「大壁」であれば良いと思いますが、利益を優先する業者が「大壁」一本槍で物事を進め、「真壁」の選択肢をお客様に与えないような事態があるならば、それは憂慮すべきことだと思います。そして、「真壁」は和室だけの壁の仕上げ方では決してなく、洋間においても、積極的に採り入れて然るべき仕上げ方の一つです。洋間なら無条件に「大壁」という考え方は設計者として賛同できません。 「真壁」は木造らしさを真っ直ぐに表現しています。建築物が存続する限り存在する「柱」という自然素材と共生し、その経年変化を楽しむことができます。「柱」は呼吸すると同時に建築物を支えています。その力強く健気な姿を壁の中に隠してしまう選択肢ばかりを消費者に与えるのは、住宅業界の貧困さの現れであると、設計者の一人として考えています。 洋室の真壁の実例 和室の真壁の実例
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