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設計者の想いの日々(ブログ)東日本大震災・竜巻・災害大震災から約4ヶ月経過して・・・
早いもので、東日本大震災から約4ヶ月が経過しました。私自身、40年以上生きてきた半生のなかで、たった4ヶ月間とはいうものの、それは10年分に匹敵する密度の濃い経験をしてきたかのような感慨を覚えます。逆を言えば、震災前の「建築」という仕事に関わる中での経験は、思慮が浅く、反省すべき点も多かったのではないかと、私自身、正直に思います。
震災直後から、建築士会や行政からの要請による建物の診断・調査や住宅相談、今まで私の手掛けたお客様の建物を約300件回ったことにより、「建築」に対する考え方は、私自身のなかで変化が生じているような気がいたします。具体的にどのように変わったかをまだ上手く説明できるほど、正直申し上げて、頭の整理がついていません。 当事務所のホームページを開設してから、約1年3ヶ月が経過し、その間、定期的にブログを書き上げていき、気がつけば、100以上のテーマを取り上げ、原稿用紙400字詰めで、合計300枚以上の分量にもなり、自分自身を気持ちをとても整理することができたと自負してきました。けれども、今回の大震災を期に、「起承転結」のなかでの「起」から、そろそろ「承」の段階に、少しずつ移行していき、自分自身を内省しながら、まずは、変化が生じつつある現在の自分自身の考え方の輪郭を明瞭にしていきたいと思います。 自分自身にとって文章を書くということは、他の誰のためでもなく、自分自身のためです。 そして、自分のために書かないような文章は、誰に対しても伝わるものがないと思っています。異論はあるかと思いますが 、これは私の哲学です。 今後、「起承転結」の「起」も「承」の段階も変わらないだろうと感想を抱かれる方もいるかと思いますが、長い眼でお付合いいただけると幸いに思います。 本日は文学的なお話になってしまいました。私自身のなかでは、「建築」も「文学」も共通項が多いものですから、ご了承ください。
被災住宅補修のための無料診断・相談制度
国土交通省が指定する「被災住宅補修のための無料診断・相談制度」の詳細は以下の通りです。
(1)被災地専用フリーダイヤルの設置(住まいるダイヤル) 被災地専用のフリーダイヤルを開設し、被災住宅の補修・再建に関する電話相談を実施します。 電話番号:0120-330-712 (一部のIP電話等からは03-3556-5147) 受付時間:10:00~17:00(日・祝日を除く) (2)被災主要都市における相談窓口の設置 被災地各県の主要都市に、相談員が対面での相談を行う窓口を設置し、被災住宅の補修方法、補修費用など具体的な相談に対応します。 郡山窓口 福島県郡山市台新1丁目33-5郡山建設会館2F 水戸窓口 茨城県水戸市笠原町978-30建築会館2F 仙台窓口 宮城県仙台市青葉区本町2丁目3-10仙台本町ビル9F ハウスプラス住宅保証株式会社 東北営業センター内 開設時間:10:00~17:00(日・祝日を除く) (3)現地での無料診断・相談の実施 各被災地において、住宅瑕疵担保責任保険法人の検査員が被災住宅の無料診断等を行い、補修方法、補修費用など具体的な相談に対応します。 ※上記の各相談時には、相談者からの依頼に応じて、被災住宅の補修・再建を行う事業者を紹介します。 ※実施主体は、「一般社団法人 住宅瑕疵担保責任保険協会」です。 http://www.mlit.go.jp/report/press/house04_hh_000233.html ここからは、この相談・診断制度についての私なりの私見です。 この制度は、点検商法・無料診断商法による悪質な工事業者が跋扈するのを防ぐため、あるいは良質な点検・診断を講ずることにより、被災された方々の住宅の補修の品質を高めようというものです。 この制度のいちばんのメリットは、税金が投入されていますので、建築士の資格を持った者による、現地での相談・診断業務を無料で受けられるということです。例えば、当設計事務所単独で、このような業務を現地で行う場合、その性質上、どうしても有料とせざるをえなくなり、一時間前後の相談・診断業務で、交通費込み5000~10000円の費用がかかってしまいます。そういった費用を公金で負担してくれるわけです。 この制度のデメリットとしては、建築士といえども、玉石混淆ですので、当たり外れがあるということです。お客様の目線に立って親身に相談に乗る者もいれば、建築的能力に欠ける者、あるいは、そう信じたくありませんが、単なる小遣い稼ぎに来る者もいるということです。当然、特定の建築士を指名できるわけではありませんので、巡り合わせの要素が多分にあるということになります。
災害に係る住家の被害認定基準の見直し
内閣府の「災害に係る住家の被害認定基準」の見直しが5月2日に発表されました。
従来の指針では、建物の1/20以上の傾きが「全壊」、1/60以上1/20未満の傾きの場合は、一律に15%損壊していると計算したうえで、屋根や外壁などの各部位の損害割合を加えて、20%以上40%未満なら「半壊」、40%以上50%未満は「大規模半壊」、50%以上は「全壊」と判定していました。 このような判定基準の場合、建物が1/60以上傾いてしまい、そこでの生活が事実上、不可能に近いにもかかわらず、屋根や外壁などの各部位の損傷が軽微の場合、「半壊」にすら及ばず、「一部損傷」扱いとなっていました。 もし、建物が1/60以上傾き、それに伴って、床も1/60以上傾いた建物で、人間が生活した場合、人間の平衡感覚は狂い、めまいなどの症状が現れ始め、次第に身体が蝕まれていくことになります。 新たに見直された指針では、建物の1/20以上の傾きが「全壊」なのは従来通りで、1/60以上1/20未満の傾きの場合は、「大規模半壊」となり、1/100以上1/60未満の傾きの場合は、「半壊」となります。 また、液状化現象により、建物の基礎などが地面に潜り込んでしまうようなケースについても、潜り込み量が床上1m以上の場合は「全壊」、床までの場合を「大規模半壊」、基礎の上部から25cmまでの場合を「半壊」と判定することとなりました。
高台や傾斜地の敷地の安全性
高台や傾斜地にある敷地で、大震災により、がけ際の擁壁が傾き、また、それに伴って、建物も傾くというケースがあります。このような事態を回避するために建築基準法第88条では、擁壁の高さが2mを超える場合は、工作物の確認申請が必要とされています。つまり、擁壁を設計するにあたっては、土圧・水圧等を考慮して構造計算を行ってから施工してくださいというものです。また、擁壁の工事が完了した際は、所定の完了検査を受けて、検査済証を発行してもらう必要があります。このようなプロセスを経ていない擁壁は、安全性が法的に確認されないということで、その敷地は、規制の対象になります。
茨城県建築基準条例では、通称、「がけ条例」というものがあります。簡単に説明しますと、高台の敷地で、「がけ際」からの距離が、「がけ」の高さの2倍以内の位置に、建物を建てる場合には、基礎を深くする、あるいは規定の支持地盤まで杭を打設する必要が出てきます。例えば、「がけ」の高さが3mの場合、その2倍である6m以上、「がけ際」から建物が離れていれば通常の基礎で支障ありませんが、もし6m以内の位置に建てる場合は、災害の際、「がけ」が崩れたり、安全性の確保されていない擁壁が傾くことに伴って建物が傾かないように、規定の支持地盤まで杭を打つなどの対応が必要になるということです。 この「がけ条例」は、「がけ」下の敷地にも適用されます。「がけ」上の規制と同様に、「がけ」際からの距離が、「がけ」の高さの2倍以内の位置に建物を建てる場合は、建築基準法上、安全な擁壁が必要ということになります。 また、この高台や傾斜地の敷地は、切り土や盛り土のような造成工事によって、形成される場合も多いのですが、慎重に工事が行われたようであっても、盛り土した部分の地盤が弱く、災害の際に、その部分が陥没するケースがあります。特に、切り土の部分と盛り土の部分に建物を配置する場合は、不同沈下の危険性を考慮し、地盤の十分な調査と安全な基礎の設計が必須となります。
東日本大震災を通じて瓦屋根を考える
東日本大震災では、屋根の瓦の棟(むね)などにある「ぐし」と呼ばれる部分の脱落が相次ぎました。大きな地震でしたので、そのような瓦の損傷もやむをえないだろうという意見がある一方、建築基準法の趣旨に沿った施工のされていない違法な屋根工事の横行がその被害を拡大したという見方もあります。
昭和25年に定められた建築基準法施行令には次のような条文があります。 (屋根ふき材等の緊結) 第39条 屋根ふき材、内装材、外装材、帳壁その他これらに類する建築物の部分及び広告搭、装飾搭その他建築物の屋外に取り付けるものは、風圧並びに地震その他の振動及び衝撃によって脱落しないようにしなければならない。 2.屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造は、構造耐力上安全なものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。 昭和46年1月29日の建設省告示第109号では、「屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造方法を定める件」ということで、次のように、もう少し具体的に書かれています。 建築基準法施行令第39条2項の規定に基づき、屋根ふき材、外装材及び屋外に面する帳壁の構造方法を次のように定める。 第一 屋根ふき材は次に定めるところによらなければならない。 一 屋根ふき材は、荷重又は外力により、脱落又は浮き上がりが起こさないように、たるき、梁、けた、野地板その他これらに類する構造部材に取り付けるものとすること。 二 屋根ふき材及び緊結金物その他これらに類するものが、腐食又は腐朽するおそれがある場合には、有効なさび止め又は防腐のための措置をすること。 三 屋根瓦は、軒及びけらばから2枚通りまでを1枚ごとに、その他の部分のうち、むねにあっては1枚おきごとに、銅線、鉄線、くぎ等で下地に緊結し、又はこれと同等以上の効力を有する方法ではがれ落ちないようにふくこと。 10年以上前、新築住宅の主流を占めた住宅金融公庫の仕様書のなかでは、瓦葺きの棟(むね)などの部分の「ぐし」の留めつけ(緊結)について、次のように書かれています。 ・むね積みは、のし瓦を互いに緊結し、がんぶり瓦又は丸瓦を1枚ごとに、地むねに緊結線2条で締めるか又はのし瓦及びがんぶり瓦を一緒に鉢巻状に緊結する。 ・洋形瓦のむね施工で太丸を施工する場合は、ふき土を詰め地むねより緊結線2条で引き締める。 全日本瓦工事業連盟では、このような建築基準法の趣旨に沿った「瓦のガイドライン工法」を推奨しています。実物大の家屋による振動実験の結果を受け、震度7までの大地震に耐えられる耐震工法です。 以上、ここまで長々と書き連ねてきましたが、「緊結」という言葉が何度も出てきました。けれども、東日本大震災の瓦の「ぐし」の被害の惨状を見る限り、「緊結」というキーワードから程遠く感じるのは、私だけではないだろうと思います。 もちろん、「緊結」が必ず正しいわけではありません。「遊び」がなく、「逃げ」のきかない「緊結」が仇になるケースがあります。しかし、そのような「遊び」や「逃げ」を踏まえたうえで、力を上手に逃がして衝撃に対抗するような「緊結」が大事なのではないかと思うのです…
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