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設計者の想いの日々(ブログ)東日本大震災・竜巻・災害震災から約8ヶ月…
さて、震災の影響による、壮絶な現場を、8ヶ月経過した現在でも、いまだに見る機会があります。
先日は某ディーラーの店舗兼整備工場です。 ショールームの外部に面するガラスは全て割れ、天井は落ち放題、床は大きな段差だらけ、建物の裏にある高台の崖を留める4m近い高さの擁壁は15°以上傾き、今にも建物に向かって倒れそうなオーラを発しています。 道路を自動車で走っている分には、誰にも気にもとめず、通過してしまうような建物ですが、このように、一歩、建物のなかに踏み入れば、まさに驚愕の世界が待っています。 震災以来、トラウマとなるような現場を数多く見てきて、建築士とは、人間の命を預かる仕事なんだなと率直に思った次第です。 ちなみに、私の設計した物件は、ほとんど被害ゼロです。クロスや塗壁などの内壁のひび割れは被害のうちに入らない前提ですけどね…。ただ、運が良かったせいもあると謙虚に受け止めたいと思います。 (民間物件の被害状況の写真は、私は絶対に公開しませんので、ご了承ください)
台風と地震
台風15号の影響により、関東地方も暴風域に入りつつあるようです。とても、外など歩けたものではありません。建築基準法では、暴風時あるいは地震時に耐えられるように建築物の構造の基準を規定しています。
けれども、暴風時に大きな地震が来た場合について、現在の建築基準法では想定外の扱いになってます。風圧力+地震力で、建築物がどのような被害を受けるか、そのような検証を聞いたことがありません。つまり、ありとあらゆる災害に万能である仕組みにはなっていないということです。天災には人智も及ばないということでしょうか。 いずれにせよ、台風の被害が最小限に済んで、かつ、大きな余震が来ないことを祈ります。
液状化現象を考える
マスコミの報道によれば、茨城県内の液状化現象が発生した市町村は、県内44ある市町村のうち、36の市町村で確認されたとのことです。液状化現象が起きなかったとされる県内の市町村は、高萩市、笠間市、牛久市、常陸大宮市、桜川市、小美玉市、城里町、大子町とされていますが、大子町は別として、私はその情報を額面通り、受け止めてはいません。特に、私の在住する小美玉市ではその被害がないとされていますが、小美玉市内の霞ヶ浦流域で、本当に液状化が発生しなかったのか、再調査の検討の余地はあると思います。
茨城県内の液状化現象が顕著だった区域は、県北部沿岸、利根川下流沿い、霞ヶ浦流域、那珂川、鬼怒川、小貝川沿いなどで、関東では、茨城県がいちばん広範囲にわたってその被害が発生したとされています。具体的地名を挙げると、潮来市日の出地区、稲敷市稲佐地区が酷く、水戸市千波湖周辺もその被害に見舞われ、水戸市役所が使用不可になったのは、巷間、伝えられるところです。そもそも、市役所をあのような干拓地に移転したきたこと自体、常軌を逸しており、1964年の新潟地震で、液状化現象が確認されていたにもかかわらず、その反省を生かしきれなかった、このことは、40年前とはいえども、浅はかで、非常識な計画であったように思います。 液状化現象は砂質地盤で水位の高い地盤で発生します。液状化現象が起こった瞬間を私が実際に見たわけではありませんが、霞ヶ浦流域で、その被害にあった方々の話を聞けば、泥まじりの水が、あちこちで、3mくらいの高さまで勢いよく噴き出し、死を覚悟せざるをえなかったとのです。液状化現象の爪痕は、数日後、私も生まれて初めて確認しましたが、壮絶なものでした(具体的画像でご説明したいところですが、私は公でない建物の被害状況・液状化現象の画像は一切公表しない主義ですので、悪しからずご了承ください)。震災後、数日間、土浦市内を回りましたが、市街地随所で液状化の跡が散見されました。 液状化現象が発生しやすい場所としては、海や湖沼の埋め立て地、干拓地、旧河川跡や池跡や水田・蓮田跡、砂利採掘跡の埋地、砂丘地帯や三角州、などが挙げられます。 液状化現象の発生するプロセスは以下の通りです。(wikipediaより引用) 砂を多く含む砂質土や砂地盤は砂の粒子同士の剪断応力による摩擦によって地盤は安定を保っている。このような地盤で地下水位の高い場所若しくは地下水位が何かの要因で上昇した場所で地震や建設工事などの連続した振動が加わると、その繰り返し剪断によって体積が減少して間隙水圧が増加し、その結果、有効応力が減少する。これに伴い剪断応力が減少して、これが0になったとき液状化現象が起きる。 簡単に言えば、豆腐のような、水混じりの砂という「固体」が、強い地震などの振動により、「液体」化するということです。 今回は強い揺れが約2~3分間にわたり持続した非常に長い地震でした。瞬間的・爆発的地震であれば、強い揺れであっても、ここまで液状化現象が広範囲に及ぶことはなかったでしょう。震災後、液状化現象への対策の研究が急ピッチで行われています。その成果が、今後、次々と発表されてくることでしょう。また、建築基準法の改正も数年後に予想されます。 尚、建物の不同沈下、建物の傾きは、液状化現象が発生した地域で顕著ですが、液状化現象が起きていない地域でも、数多く散見されていることを付け加えておきます。茨城県内の一戸建住宅約100万棟のうち、建物の不同沈下、建物の傾きが起きて、現状のままでは長く住むことができないと思われる住宅は、約5万棟と推測されます。
木造住宅耐震診断士
先日、木造住宅耐震診断士の資格を取得しました。といっても、一級建築士取得後5年以上、もしくは二級建築士取得後10年以上経過して、半日の講習会を受講すれば、誰でも取れる資格です。
木造住宅耐震診断士の主な仕事は、各自治体からの依頼を受けて、耐震基準の強化が規定され建築基準法が改正された1981年以前に建築された木造住宅の耐震性を診断することです。1981年以降の建物は対象外になります。 この診断費用については、3万円程度かかりますが、各自治体の補助を受けることができますので、ほぼ無料で行うことができます(自治体によって異なります)。但し、予算により、件数に限りがありますので、先着順等になるかと思います。 この木造住宅の耐震診断を受けることで、建物の耐震性を専門家に確認してもらって安心したいと思っている方々は多いと思います。特に、震災後は、この木造住宅の耐震診断の問い合わせが各自治体に増えているようです。ただ、1981年以前に建った木造住宅の耐震診断の結果は、ほとんど例外なく、いや100%、「耐震性に乏しい」という判定となります。耐震基準が強化された1981年の法改正以前に建った建物が、「耐震性に乏しい」ものになるのは当然の結果、「火を見るより明らか」であります。そして、この「耐震診断」ですが、耐震補強のための計画・設計は含まれていません。あくまで、現行法に沿って、建物の耐震性を診断するにとどまります。 この辺のところが、何かすっきりしないものを感じるので、私は、「木造住宅耐震診断士」の資格を敢えて取得しようとは思わなかったわけですが、震災後の耐震性の意識の高まり、被災者に対する建築士として可能な範囲での精神的なケアが必要なのではないかと感じることがあり、建築士会からの勧めもあって、取得に至りました。 実際、耐震補強の設計もしくは、その工事がいくら費用がかかっているかというと約200万前後が平均的相場のようです。耐震補強の工事自体は、壁を一度剥がして、筋交いを取り付けたり、構造用合板を貼ったりするだけなので、比較的費用はかからないのですが、やはり、内装の復旧・仕上工事の、費用に占める割合が大きいようです。リフォームのついでに「耐震補強」をしてみようという考え方のほうがいいような気がします。 この耐震補強の工事ですが、自治体によっては、補助金を30万程度受けることができるようです。但し、この補助金を受けるためには、先に説明しました「耐震診断」を受けて、その結果がNG(耐震性に乏しい)になっていることが前提です。
茨城県の住宅被害状況を考える
国(内閣府)の基準に基づく、8月11日現在の茨城県内の住宅被害状況は以下の通りです。
全壊棟 2665棟 半壊棟 18290棟 一部破損棟 150452棟 今まで、行政及び建築士会の依頼で、罹災証明の調査を行ってきた私なりの見解で、「全壊棟」、「半壊棟」、「一部破損棟」について、概略を説明しようと思います。 「全壊」とは、人が住めるような状態にはなく、建物内部及び周辺に立ち入りすることが危険な状態です。ほぼ修復不可能なレベルまで建物が破壊されています。 「半壊」とは、修復費用が500万~1000万以上かかるような状態で、人が住めないような状態、もしくは、修復しなければ、長い間の生活がきわめて困難な状態にあります。 この「全壊」と「半壊」の状態が、茨城県内の住宅で、2万棟以上存在していることになります。 また、「全壊」と「半壊」の基準に達してしない「一部破損棟」のなかでも、人が住めない状態だったり、500~1000万単位の修復費用をかけなければ、長い間の生活が困難であるケースは、「全壊」「半壊」の合計数である2万棟の数倍に及ぶと推測されます。 茨城県内では、一部地域を除き、被害が全く無い住宅は皆無に等しい状況で、屋根、内装・外装の破損ばかりが目に付きますが、建物の不同沈下、建物の傾きの問題が非常に深刻です。この建物の不同沈下ですが、液状化現象が起こっていない地域でも、多く散見されます。またマスコミの報道では、液状化現象について、千葉県浦安市、茨城県潮来の日の出地区、水戸駅南口等が報道されていますが、それはあくまで氷山の一角に過ぎず、茨城県内の多くの地域で確認されています。 この国(内閣府)の罹災レベルの判断基準は、今年の5月に緩和されましたが、それでも、民間の保険業者の査定と比較して、極めて厳しいのが実情です。 ここで、建築に携わる者として、私自身、申し上げたいのは、茨城県内の震災の死者は東北各県と比較して、少ないのかもしれませんが、建物の被害は甚大だということです。建物の外観は、それほど被害があるように見えなくても、建物内部に入った瞬間に驚愕するケースは多々ありました。この5ヶ月間、建築士としての様々な活動を通じて、目を覆うような場面に多く遭遇してきました。このトラウマになりかねない経験を通じて、住宅・建築業界の未熟さ、自然の脅威を思い知りました。これ以上、人間の不幸は見たくありません。人間の「幸福」を導くのが建築士としての「使命」なのです。この原点を忘れずに、これからの半生を送っていきたいと私は考えています。
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