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設計者の想いの日々(ブログ)2013年10月17日(木)茨城県産材の杉の梁の普及に尽力する
ここ最近、私は、茨城県産材の杉の梁材の普及に努めたいと考えています。茨城県では、今後、大径木の杉の供給が増えていきますから、これを梁材として積極的に利用していきたいのです。
といいますのも、広島に本社を置き、茨城県内にも製材工場がある中国木材の米松(北米産)の梁(ドライビーム・KD材)が市場を席捲している状況に、少しでも対抗したいと思うからです。 「ドライビーム・KD材」は、人工乾燥により、含水率を下げ、狂いを無くし、強度もあるというのが売りですが、そんなのはとんでもない話です。 人工乾燥の釜に入れて、水分も抜くと同時に脂身も抜いてしまう。松に脂身が無くなったら、木材の特性である「粘り」が無くなってしまいます。 また、人工乾燥に効き目があるのは、木材の目荒材です。目荒材は年輪の荒い、元々強度の弱い木材です。 目荒材に対して、強度のある、年輪の細かな、目が積んでいる木材は、人工乾燥に適しませんので、人工乾燥されたドライビーム・KD材は全て目荒材です。 人工乾燥された木材は、パサパサで、木が死んでいるかのような色です。 また木材の内部割れも生じやすいので、強度面にも不安を抱えます。 消費者軽視・生産者重視のハウスメーカー・ビルダーならともかく、地場の工務店、設計事務所はこういう材料を使用するのはやめて欲しいと思います。 こんな材料を使って、何が長期優良住宅なのか、非常に理解に苦しみます。 私がこう書き記しても、残念ながら「権威」というものがないので、以前、このブログで紹介したかと思いますが、再度、「板倉建築住宅」で知られている筑波大の安藤邦廣名誉教授の名言を下記に引用します。 『人工乾燥の木材は細胞が老化した老人の肌のようなもの。バサバサしていて艶もないし張りもない。呼吸しない。 それに対して自然乾燥の木材は若者の肌のようなもの。収縮や膨張などの悪さもするが艶やかで張りもあるし呼吸する。それに、これから壮年期にかけて更に強くなる。だから何百年もの間家屋を支えることができた。 それに対してKD材は、強制乾燥をかけた直後から劣化が始まる。しかしそれでも、30年程度は問題なく家屋の建材として使用に耐えることはできる。 今の日本の住宅は大抵30年位で寿命が来るから、それだけ持てばよいというのなら、KD材でも問題ない。 ただし、かつての日本の民家のように、建て替えの際に木材を再利用することは絶対にできない。劣化した抜け殻のようなものだから。』 ちなみに梁は、歴史的に地松(黒松)が使用される地域が多かったですが、茨城県北の旧里美村などでは杉の梁が当たり前のように使用されてきたようです。 また紀州などでも、杉の梁が多用されるなど、決して杉が梁として不向きでないはずです。 現在の日本では、国産の松の資源量が非常に乏しいため、外材の米松が代替品として多用されることとなり、今に至ります。 杉の梁については、曲げ強度は非常に強いのですが、柔らかい木材であるため、たわみやすい性質を持ちます。従って、地松や米松よりはその寸法を大きくする必要があります。 また、木材は、人間と同様で、木一本一本それぞれ強度が違います。 従って、スパンを飛ばすための梁には、目の積んだ強度のある材料を使用し、スパンを飛ばさない梁は目の荒めの強度の低い材料を使用するなど、適材適所に使い分けることが必要です。 そのためにも、木の素性を吟味しないで加工することが多いプレカット工場の機械による刻みは不向きで、大工さんが材木屋さんと協力しながら、適材適所に杉の梁材を手刻みで加工することが非常に重要となります。 ちなみに「適材適所」という言葉は、材木屋さんから生まれた成語と言われています。 茨城県産の杉の梁材を使用することは、「地産地消」の理念を大事にすることにもつながりますし、さらには、熟練した大工さんの技術を若い世代に継承することにもなります。 現時点において、茨城県産の杉の梁は、KD材以外については、受注生産品です。発注から納品まで3ヶ月かかります。現在の情勢では、お客様を待たせてしまうような状況です。しかし、近い将来、紀州の杉の梁材のように、KD材ではない茨城県産の杉梁の在庫が出来るような状況になるべく、精力的に奔走したいと私は考えている次第です。
落日荘
今回見学した建物は石岡市(旧八郷町瓦谷)に建てられた「環境建築・落日荘」です。
岩崎駿介・美佐子ご夫妻が終の棲家として計画、設計、自力建設されました。瓦葺など特殊技能が必要な仕事以外は全てご夫妻の手によるもので、着工から8年かかったそうです。 地球環境に調和し、時代を超える持続的な生命力を内に秘めた住まいとして計画され、2012年日本建築家協会環境建築賞住宅部門・最優秀賞を受賞した建物です。 落日荘より足尾山を眺む。
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