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設計者の想いの日々(ブログ)すべてホワイトウッド集成柱を斬る~経済性を追求した成れの果て
木材業者、大工、あるいは、良心的な建築士の間のなかで、非難轟々の渦に晒されている材料があります。
それは、何かというと、『ホワイトウッドの集成柱』というものです。 「集成柱」とは、いくつもの木片を糊で貼り付けて、105㎜角・120㎜角の柱にしたものです。 集成材は梁、その他造作材にも使用されていますが、今回は、『ホワイトウッド集成柱』にスポットを当ててみたいと思います。 ホワイトウッドの産地は北欧・ロシアなどが産地で、日本の高温多湿の気候からかけ離れた地域で産出されているため、日本の気候に馴染まない材料です。北欧などの現地ですら、腐りやすいという理由であまり使用されていません。 外部に晒されるウッドデッキに使用したなら、3年も持てばいいほうです。 ただでさえ、耐久性のない材料であるにもかかわらず、日本の高温多湿の劣悪な条件で、どれだけ構造体として耐えられるのでしょうか。さらに悪いことに、この材料は、白蟻にも滅法、弱いものです。 『ホワイトウッドの集成柱』がこれだけの弱点を抱えているにもかかわらず、ハウスメーカーを中心に採用されているのは、非常に安価だからです。商社から大量に買い付けることで、コストダウンを図っているわけです。 しかも、『ホワイトウッドの集成柱』が、無垢の柱より1.5倍の強度と喧伝し、画期的な材料のように、消費者に説明しています。確かに、材料が古くないうちであれば、その位の強度が出るように生産しているのでしょうけれども、元々、耐久性に乏しいわけですから、全く無意味です。 こんな材料を使用しても防蟻処理すれば、「長期優良住宅」に適合したりするわけですから、全くの茶番です。 最大手ハウスメーカーの一つは、こんな材料を使用して、坪70万で消費者に売りつけたりする詐欺行為をしているのです。 日本の杉や檜と比較して、格段に耐久性が落ちる『ホワイトウッドの集成柱』をハウスメーカーが使用するのは、もう一つ理由があります。集成材は含水率の低い材料ですから、木の反り・暴れがないため、クロスのひび割れや建具の建付けが悪いなどのクレームを減らすことが出来るということです。 このような些細なクレームを処理するのが煩雑ですので、この手の集成材を使用することになるのです。 日本の森林資源は豊富です。大径木のものは採りにくくなりましたが、柱材程度の太さの樹木は、あり余っています。杉花粉症が深刻になるほどですから、どれだけの林産資源が眠っているのか、想像に難くないと思います。 質の高い日本の林産資源に目を向けず、外国の粗悪な材料を買い付けることで、日本の建築・住宅文化がどれだけダメージを受けているか、大資本のハウスメーカー、地域のハウスビルダー、また、それを支持する消費者には猛省を促したいと私は考えています。
KD材・AD材・グリーン材とは~自然素材の再発見
柱、梁などの木造の構造材は、その乾燥方法によって、下記の通り、大きく3種類に分類されます。
①KD材(Kiln Dry Wood)と呼ばれる人工乾燥材で、温度や湿度、風量等を制御できる釜に入れて短期間で乾燥させる方法 ②AD材(エアドライ材)と呼ばれる天然乾燥材で、文字通り、自然に乾燥させる方法 ③グリーン材と呼ばれる、天然乾燥過程がまだ十分でない木材 つい数十年前までは、②の天然乾燥材が主流でしたが、現在では、①のKD材が主流となりつつあります。 AD材(天然乾燥材)は、原木から製材されて、どんなに短くとも半年から一年の乾燥期間が必要ですが、KD材(人工乾燥材)の場合、2週間から一ヶ月程度で済みます。また、KD材は、含水率をAD材(天然乾燥材)以上に下げることが可能なので、木材の狂いや暴れを極力減らすことが出来ます。木材の狂いがほとんど無くなる状態になることで、建築構造上、不具合が短期的には無くなり、仕上のクロスのひび割れ、建具の建付けが悪くなるなどのクレームを減らすことに繋がります。 それから、構造材のプレカット工場の普及によって、より狂いの少ないKD材が好まれるということも背景にあります。 このように、KD材は良い点ばかりのように思えますが、大きな欠点もあります。 それは、人工乾燥の釜に入れることで、含水率を下げることが出来るのですが、木の持つ脂身まで失うこととなり、木材の内部の割れが生じるなど、多くの問題を抱えます。木の持つ脂身を失うということは、木の性質が持つ「粘り」が無くなり、耐久性そのものも失います。もちろん、30~40年の耐久性はあるでしょうけれども、50~100年前後の耐久性を望むことは難しいでしょう。 それに対して、AD材(天然乾燥材)は、KD材より狂いやすい材料ですが、木の脂身を失わないことで、木の性質が持つ「粘り」を保ち、表面割れの現象こそ起こりますが、内部割れのような構造的欠陥は生じません。 つまり、狂いやすいというAD材の欠点を補うために、木の性質や素性を読みながら、大工さんが手刻みで加工を行えば、AD材を使用しても問題が無く、長い耐久性を保つということです。 グリーン材についても同様です。伐採直後の水の滴るような状態の材木は論外ですが、ある程度の含水率まで下がっている状態であれば、AD材同様、フォローすることは可能です。KD材とグリーン材を曲げ・圧縮・せん断試験などをすれば強度は、断然グリーン材の方が上です。 元々、KD材は、乾燥を速めるため、木材の目の積んでいない強度の弱い材料を使用します。木材の目の積んでいる強度ある材用を使用することはありません。 木材の細胞は50度以上に加熱されることで組織は死んでしまいます。死んだ木材細胞は、吸湿能力もほどんとなく、木の香りも艶もなくなり、強度も弱まります。 「板倉建築住宅」で知られている筑波大学の安藤邦廣教授の言葉を下記に引用します。 『人工乾燥の木材は細胞が老化した老人の肌のようなもの。バサバサしていて艶もないし張りもない。呼吸しない。 それに対して自然乾燥の木材は若者の肌のようなもの。収縮や膨張などの悪さもするが艶やかで張りもあるし呼吸する。それに、これから壮年期にかけて更に強くなる。だから何百年もの間家屋を支えることができた。 それに対してKD材は、強制乾燥をかけた直後から劣化が始まる。しかしそれでも、30年程度は問題なく家屋の建材として使用に耐えることはできる。 今の日本の住宅は大抵30年位で寿命が来るから、それだけ持てばよいというのなら、KD材でも問題ない。 ただし、かつての日本の民家のように、建て替えの際に木材を再利用することは絶対にできない。劣化した抜け殻のようなものだから。』 国を挙げて、「長期優良住宅」が推奨されている昨今ですが、KD材が主流となっている現在の家造りをみると、せいぜい30~40年持てば良いという、戦後以降の家造りの考え方が、益々、加速されているように感じます。 大工職人の高齢化が進み、構造体の手刻みの加工が出来る職人が減りつつある現在、木材の良さ、自然素材の良さを改めて見直して、再発見していく必要があると、私は、常々、考えています。
地鎮祭地鎮祭とは、建物を建てる際に、工事の無事・安全と建物や家の繁栄を祈る儀式のことを言います。 一般的には「じちんさい」と読みますが、「とこしづめのまつり」と読むこともあります。 工事の着工にあたり、最寄の神社から神主さんをお招きして、神様にお供え物をし、祝詞をあげ、お祓いをして浄め、最初の鍬や鋤を入れ、工事の無事を祈ります。 地鎮祭の吉日とされるのは、大安、友引、先勝の日です。(先勝の場合は、先に行った方が勝ちということで午前中に行います) 地鎮祭は数百年以上の歴史があり、遠い昔から行われている歴史のある行事であり、 記録では、奈良時代には既に地鎮祭があったとされています。 一般的には、神式で神主さんが行いますが、仏式・キリスト教式で行っても構いません。 神主さんの謝礼の相場は3~5万で、熨斗袋に、「御初穂料」「御玉串料」「御礼」などと書いてお渡しします。 昔の地鎮祭は、笹竹、砂、米、塩、海の幸、山の幸、野の幸など、必要なものを建築主・施工会社が用意するものでしたが、現在では、神主さんのほうで用意する場合も増えてきています。 式の後半になると、玉串奉奠(たまぐしほうてん)というものがあり、二礼二拍手一礼をして、神前に玉串を捧げます。玉串とは、榊(さかき)などの常緑樹の小枝に、紙のヌサ(幣)と言われるものを付けたものです。原則的に参列者全員が行います。 最後に、神酒拝戴(しんしゅはいたい)と言って、祭壇にあがっていたお神酒を頂き、参列者に行き渡ったら、全員で戴き、乾杯をして、工事の無事・安全と建物や家の繁栄を祈ります。 ちなみに、地鎮祭のあとには、近所に工事が始まる旨を伝え、挨拶をしたほうが良いでしょう。 四方祓い(シホウハライ) お神酒、米、塩、白紙などを、敷地の中央と四隅にまきます。 地鎮祭については、絶対行わなければならないものではありません。、あくまで任意に過ぎないのですが、なぜか9割以上の方が執り行っているようです。日本の伝統と乖離したように見える現代の日本にあって、意外にも、無意識のうちに、日本の長い伝統が根付いているのかもしれません。
土佐和紙壁紙
経年劣化が激しく、化学製品である「ビニールクロス」貼ではなく、月日とともに風合が現れてくる自然素材である「和紙」を使いたくても、非常に高価でなかなか使えないのが現状でしたが、「ビニールクロス」と価格面で同等に近い「和紙」を見つけることが出来ました。
本題の「和紙」の話の前に、「ビニールクロス」について、簡単にご説明します。 価格の点から申し上げれば、「ビニールクロス」にも大きく二種類あります。一つは、ハウスメーカー、建売住宅、アパート・マンションによく使用される「普及品」タイプと、良心的な住宅会社・工務店や設計事務所、あるいは店舗などでよく使用される「1000番台」のタイプです。「普及品」タイプは、白系等、花柄模様を中心とする大量普及品で、安価ですが、種類が限られています。「1000番台」のタイプは、種類は非常に豊富で、意匠的にも面白いものもありますが、「普及品」タイプよりは高価です。 当設計事務所で、予算の問題で自然素材を使えず「ビニールクロス」を使用するとすれば、この「1000番」タイプで、「普及品」タイプを使用したとしても、納戸や便所などにその用途を限っています。 本題に戻ります。 「ビニールクロス」と価格面で同等に近い「和紙」は、1000年以上の歴史がある「土佐和紙」で、「和紙」は本来、「手漉き」のものでしたが、高知大学農学部と高知県立紙産業技術センターなどを中心に、「土佐の伝統産業を守る」というこの一念のもとに、近年、「機械漉き」の「土佐和紙壁紙」が開発されました。 「手漉き」を「機械漉き」にすること、そして、営業・販売・流通経費をかけないことによって、コストダウンに成功しています。 この「機械漉き」の「土佐壁紙和紙」は、「1000番」タイプの「ビニールクロス」の価格+100~300円/㎡程度の価格で実現可能です。住宅一軒で、平均の壁・天井の面積が300~400㎡ですから、「1000番台」タイプの「ビニールクロス」+10万前後の価格で実現出来るということになります。(注意:施工会社によって異なります) この和紙の詳細ついては、「土佐和紙壁紙」で検索してみてください。 土佐和紙は国の伝統工芸品として指定を受け、土佐和紙を代表する土佐典具紙、清帳紙は、「無形文化財」に指定されており、土佐和紙の原料である「楮(こうぞ)」「三椏(みつまた)」は、高知県が全国の生産量の55%を占めています。 和紙は、ジョイント部分について、「重ね貼り」が基本です。対するビニールクロスのジョイント部分は、「突き付け」です。つまり、和紙は、1~2cm、ジョイント部分を重ねて貼るため、どうしてもジョイント部分が目立ちます。和紙は、調湿性があり収縮するため、どうしてもそのような施工方法になるのですが、それを風合いと捉えるかどうかは、人それぞれの価値観だと思います。 日本の伝統産業を守り、かつ、日本の伝統を積極的に取り入れて、いかに現代と調和させていくか、これは当設計事務所の使命であると考えています。
真壁伝承館筑波山系の山並みを背にして建築された桜川市の「真壁伝承館」は、真壁地区交流の場、そして真壁地区を訪れる人たちのための案内施設として、平成23年9月1日に開館しました。 その建築地には、かつて江戸時代の役所である「真壁陣屋」がありました。そのため建築に先立ち、発掘調査を行われ、陣屋を囲んでいた堀や内部にあった池などの遺構や遺物が多数、発見されました。 この施設には、真壁産の御影石や、茨城県産間伐材の杉材がふんだんに使われ、また、重要な歴史的文化遺産が多く保管されています。 玄関の出入口がわかりにくい、雨水の処理など、設計上に多少、配慮が欠ける部分がありますが、2012年の日本建築学会賞を受賞しています。 そういう賞に選ばれるくらいですから、設計及び施工には、細部に至るまで、工夫が施されています。 ただ、登録有形文化財が104棟もある地域性を考慮すれば、S造(鉄骨造)ではなく、木造で建てたら、もっと良かったように、私は思います。 ちなみに桜川市真壁地区は、2010年6月に、日本で87番目、関東地区では4番目の「重要伝統的建造物群保存地区」に選定され、江戸時代以来の町割りが残り、蔵造の町家を中心に、近代の町家や洋風建築も残っています。 東日本大震災では、甚大な被害を蒙りましたが、修復・復元工事が着実に行われており、往年の姿を取り戻そうとしています。 昔ながらの土壁の下地である「竹小舞」が組まれています。 今日の昼食は… うまかべ すいとん~割烹 二葉(桜川市真壁)
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