設計者の想いの日々(ブログ)
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永井昭夫
建築設計事務所
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設計者の想いの日々(ブログ)

住宅・建築業界

欠陥住宅を考える

いわゆる欠陥住宅と呼ばれるご相談が、当設計事務所にも舞い込むことがございます。
お話をお伺いしてみますと、ご相談者の行き過ぎたクレームに該当するような事例もありますが、なかには、目を覆うような、酷い施工事例もあり、このような場合は調停・裁判に進むことも珍しくはありません。
木造住宅では、木工事の占める割合が多いためか、大工の施工の悪さに起因する事例が多いです。ちなみに、非住宅では、業者の建築基準法・消防法・都市計画法への理解不足によるトラブルが見受けられます。
大工の施工が悪い、大工が下手クソというだけでは、論拠として、調停・裁判には耐えられませんので、悪い施工により、建築基準法などの法律に抵触するという筋書きが必要になります。
では、大工が下手クソだから、欠陥住宅が多いのかというと、その背景を探っていくと、大工に同情すべき点も多々あり、元請の建築会社の設定する単価が安いので、手間をかけられない、また手間をかけるだけの工期もない、工期が非常に短い、現場監督の段取りが悪くて思うように仕事が進まないなど、諸問題があります。
その一方で、元請の建築会社の言い分としては、他社との競争激化により単価を低く設定せざるをえない、工期を長くすると経費もかかるので、工期を短くせざるをえない、深刻な職人不足により良い協力業者が見つけられない、等が挙げられます。
では、瑕疵を未然に防ぐための瑕疵担保保険のような第三者機関の検査は何をやっているのか、これも内情は褒められたものではなく、外注する検査員の単価が安いためか、検査時間が非常に短いことが多く、保険会社に報告する書類作成に費やされる時間のほうが長いのではないかと思われるような検査になっているのが実態です。
私が少ないながらも見てきた事例としては、確信犯的な手抜き工事による欠陥住宅というものはなく、悪い条件が重なり、結果として、漫然とした施工が行われてしまったことが殆どです。
現在の日本の住宅業界は遅れています。販売は上手ですが、肝心の中身が伴いません。
では、昔からそうだったのか?私はそうではないと思います。
その証拠に、大きな松の丸太が梁として何段も重なり合うような古民家、歴史的建造物が今でも多く残存しています。現代で同じようなものを作ることは至難の技です。
古きを温ねて新しきを知る。当設計事務所の信条ですが、いつでも迷ったときは初心に帰り、原点に戻りたいと考えています。
カテゴリ:住宅・建築業界 2022年5月30日(月)

横浜の傾斜マンションを考える

横浜の分譲マンションが傾斜したという報道が過熱しています。
マスコミが本質を掴まず、過剰に旭化成叩きを行っているようにも感じますので、この問題について、手短かではありますが、当事務所なりの見解を述べたいと思います。
まず、杭の長さを設計上2m短く設定してしまい、支持地盤に達しなかったことは地盤調査の甘さと構造設計のミスによるものです。
横浜市、あるいは川崎市もそうなんですが、あの辺は傾斜地が非常に多く、支持地盤がどこにあるのか確定させるのは簡単なことではありません。
ですから、構造体の基礎の設計を行うに当たっては地盤調査の甘さは致命傷になります。
工事着工前の設計段階の時点では旭化成は全く悪くないと思います。
悪いのは設計をした「三井住友建設」です。
そして発注側の「三井不動産レジデンシャル」からコスト削減圧力と工期短縮について要請があったことでしょう。
「三井住友建設」も手間暇かかるのは面倒ですし、さっさと工事を行って資金を回収するため、肝心な構造設計とそのベースとなる地盤調査がいい加減になったと推測できます。
このあたりの構図は「設計」と「施工」の癒着、「設計施工一貫方式」の弊害と呼ばれるもので、ごく一般的なことであり、ここに施主(発注側)が加わってコスト削減という名の元に手抜き工事が行われることも珍しいことではありません。
大人の諸事情により、発注者、設計、施工が三者一体となり馴れ合うわけです。大型物件であろうが、戸建住宅のような小型物件であろうが、公共工事であろうが、大きな会社であろうが、小さな会社であろうが、このような構図は多く見受けられます。
そして、今回の杭を実際に施工した旭化成建材ですが、大きな会社ではありますが、元請のゼネコンからの圧力に晒される下請(孫請)という弱い立場にあり、改竄を行ったことは致命的であり、会社の存亡に係るような事態ですが、やはり最終的な責任は元請にあると思います。
建築主(施主)と直接契約したのは元請である「三井住友建設」なのです。下請の過失をかぶる度量が無ければ元請ではなく、単なるピンハネ屋です。
これから行政による監視強化策が打ち出されて法改正が行われると思いますが、それだけでは不十分な可能性が非常に高く、今回、元請と利害関係のない第三者たる、目の利く建築士が介在していれば、このような事態は防げたのではないかと私はふと感じました。
「物を造る」のは決して「会社」ではなく最終的には「人」なのです。

追記
旭化成の「へーベルハウス」の家が常総市で起こった鬼怒川の洪水に耐えて賞賛されましたが、「へーベルハウス」だから耐えたのではなく、「重量鉄骨造」が水の横の大きな力に対して耐えたということです。いわゆる「S造」と呼ばれますが、「木造」と同様、ごくごく一般的な工法です。
カテゴリ:住宅・建築業界 2015年10月28日(水)

「スクラップ&ビルド」から「ストックの活用」の時代への逆風

桜川市真壁地区の潮田家住宅


潮田家住宅のように災害復旧工事で綺麗に仕上がったところもあれば、3年経過しても、全く手付かずの蔵も多く残されています。


真壁は「重要伝統的建造物群保存地区」に選定されて、災害復旧工事にあたっては、潤沢な補助金が用意されているにもかかわらず、思うように災害復旧が進まないのは、特に左官工事・大工工事の熟練工の不足と高齢化が加速しているにくわえて、若年層が建設業を敬遠していることにあります。その背景にあるのは、3K産業(きつい・危険・汚い)であること、職人の地位が低いこと、また、生活が安定できるだけの報酬になりにくいことなどの原因が挙げられます。
ただでさえ、建設業に従事する者は、私の職種を含めて、世間から差別されていることが多いようです。私は、「なんで大卒なのに建設業関連のお仕事?」とある女性に真顔でびっくりされたことがあります。
若年層には物作りに憧れる人々が決して少なくないのも確かなのですが、先に述べた通り、生活を維持するだけの工賃、遣り甲斐のある仕事を貰うことができずに、修行途中で、あるいは修行後でも現場を離れてしまうことが残念ながら非常に多いです。
このままの情勢では、建物をプレハブ化して、下手糞な大工が木工組立作業員となって、味も素っ気も無い建物を新築することは出来たとしても、メンテナンス・リフォーム・改修工事のような組立工事では済まない、昔ながらの技術が必要な工事では、熟練工の不足で、困った事態に追い込まれることになります。
「スクラップ&ビルド」から「ストックの活用」の時代へと叫ばれて久しいのですが、現状を鑑みるに、掛け声とは裏腹に、全く逆行せざるをえなくなっている状況なのは否定出来ない事実です。
カテゴリ:住宅・建築業界 2014年4月9日(水)

親戚の工事業者に家を頼んだら、変な家が出来てしまった…etc

家造りの失敗例のパターンの数々を今回は取り上げてみようと思います。

1.親戚の工事業者に家を頼んだら、変な家が出来てしまった…
お互いに緊張感や計画性がなく、「ナァナァ」で物事を済ませば、失敗するのもやむをえないでしょう。親戚の工事業者を信用し過ぎた結果、言いたいことも特に言わず、家が完成して、その出来上がりがイメージと大きく違っても、親戚関係がこじれるのも困るので、鳴き寝入りするケースは枚挙に暇がありません。
「親戚」を「友達」に置き換えたケースでも、同様のことが起こりやすいと言えるでしょう。

2.ハウスメーカーやビルダーに展示場のように格好良く建ててくれと頼んだら、似ても似つかないダサい家が出来てしまった…
展示場の設計者は、大手なら本社の商品開発部の精鋭の建築士であり、地元のビルダーなら、設計事務所に外注するケースが非常に多いです。
しかしながら、一般の顧客の設計は無資格の営業社員が行っている現状がほとんどであり、また、展示場の仕様と一般顧客向けの仕様は違います。
従って、メーカーやビルダーが、ちょっと流行を取り入れただけのすぐ飽きがくるようなダサい家を量産するのは、必然的であると思ったほうがいいでしょう。また営業経費をかけ過ぎているがゆえに、例外なくコストパフォーマンスが非常に悪いのも共通するところです。某大手ハウスメーカーの4000万以上の住宅は、金額だけは「高級住宅」ですが、高級住宅でもなんでもない陳腐な代物です。

3.地元の大工・工務店に頼んだら、古臭いセンスゼロの家が出来てしまった…
そもそも、センスが良い大工や工務店は少数です。また施主の意向を無視して、大工・工務店が施工のしやすいように施主を丸め込むケースが多いのも彼らの特徴です。これからの大工・工務店のあり方は、自らの技術を奮うことに専念して、設計などのソフトの部分は、工事会社ひも付きでない、独立系の経験豊富な設計事務所に任せることです。

4.建築家に頼んだら、カッコだけで、使い勝手の悪い、生活感覚の乏しい家が出来てしまった…
施主の意向を無視し、建築家のエゴによる作品化を推し進めて、その出来上がりに施主が愕然とするケースも決して少なくありません。自分の意見を滔々と語るだけの建築家は絶対に避けるべきです。

5.消費税が上がる前に、駆け込みで、さっさと家を建ててしまおう…
注文住宅なら、失敗する可能性が非常に高いです。それはしばらく経ってから気づきます。
云千万とする建築物を建てるために、考えるべきことは無限とあります。施主のためのより良い家造りを考えていくよりも、目先のお金を追う工事業者のほうがはるかに多いです。

以上、家造りの失敗例のパターンのいくつかを書き連ねてみましたが、失敗しないための方策については、私が今まで書き記してきたブログを読んで頂ければ、自ずとその方向性がわかるようにしておりますので、是非、お時間がございましたら、当設計事務所のブログに目を通されてみてください。
カテゴリ:住宅・建築業界 2013年11月13日(水)

神栖市小学校耐震診断業務偽装事件を考える

神栖市の小学校の耐震診断で、委託された水戸の設計事務所が構造計算・診断業務を全く行っていないにもかかわらず、書類を偽造して市に提出していた事件が先月、発覚しました。
渦中の事務所は、天(あま)建築設計事務所で、管理建築士である天茂彦氏は、私の高校の先輩に当たります。優しく、神経の細やかな紳士という印象でした。
天茂彦氏は次のように述べています。
「担当所員が構造計算のできる1級建築士を探したが期限までに見つからず、(偽造を)やってしまった。担当所員は解雇した。所員の不正に気付けず、申し訳ない」

ただ一言…唖然です。
経営者として、管理建築士として、全く同情の余地がないコメントです。残酷な言い方で申し訳ありませんが、天茂彦氏は、担当所員が不正を行っているのを知っていながら見過ごしていたのではないかとしか、私には思えないのです。百歩譲って、天茂彦氏が本当に全く知らなかったとしたら、経営者として、管理建築士として、責任を放棄していたということになります。例えが良くないかもしれませんが、幼い子の母親が育児放棄をして不倫を繰り返すことと同罪です。
当然のことですが、刑事上の責任はその担当所員よりも管理建築士である天茂彦氏のほうが重くなります。

鉄骨造や鉄筋コンクリ-ト造などの構造計算の出来る構造設計事務所は、現在、非常に数が少なく、今後もさらに減少するだろうと言われています。そのような状況の中で、構造事務所の手配もつけずに、耐震診断業務を引き受けてしまったことは、重大な経営判断の誤りです。
百歩譲って、担当所員に構造事務所を探させるつもりだったのはいいとしても、なぜ、構造事務所への発注金額すら確認出来なかったのか、また業務が終わったなら、構造事務所への支払もあるはずであるし、市に診断結果を提出する前に、その内容を審査する第三者機関「茨城県建築センター」への審査費用の支払も少なくない金額です。このような金の流れも把握できずに、事務所の経営が本当に出来たというのでしょうか?

いずれにしても、今回の事件により、またもや、建築士としての信用は失墜したのは事実です。時計の針を逆戻しにすることも出来ません。いずれ天茂彦氏は建築士の免許は剥奪され、刑に裁かれることになるでしょう。一歩油断すれば自身も、天茂彦氏の二の舞になりかねないことを教訓とし、建築士の社会的信用を取り戻すべく、日々の業務に勤しんでいきたいと考えています。
カテゴリ:住宅・建築業界 2013年9月16日(月)
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