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設計者の想いの日々(ブログ)建築知識建築に関する確認の特例
一般的な木造の一戸建て住宅の大半が、構造に関する事項について、建築確認申請の審査の対象から除外されていることは、あまり知られていません。これは、建築基準法第6条の3の「建築物の建築に関する確認の特例」によるものです。つまり、特殊建築物ではない木造の一戸建ての住宅等について、確認申請での構造の審査は省略しますから、設計者の責任で、構造の検討を行ってくださいという条文です。
一般的な木造の一戸建て住宅で、構造が建築確認申請の審査の対象になるのは、特定行政庁(建築主事を置く自治体の長)がそれぞれに指定する中間検査の対象内の建築物に該当する場合です。この中間検査の対象範囲ですが、各自治体によって異なります。 木造の住宅に関しての中間検査の対象範囲を、茨城県を例に挙げてみます。 水戸市……3階建又は延べ面積200㎡以上 土浦市・つくば市・取手市・ひたちなか市……2階建かつ延べ面積100㎡以上 古河市……分譲住宅は延べ面積100㎡以上、その他の一戸建て住宅は150㎡以上 日立市・高萩市・北茨城市……3階建又は延べ面積500㎡以上 茨城県内のその他の市町村……分譲住宅は延べ面積100㎡以上、市街化区域にあるその他の住宅は150㎡以上 これらの中間検査の対象から外れた一般的な木造住宅は、建築確認申請での構造に関する審査が、建築基準法の特例により、省略されるということになります。 いわゆる姉歯事件以降、この確認の特例制度が、木造住宅の不正及び手抜き工事の温床になっているということで、国交省の意向で廃止される見込みとなっていましたが、大人の諸事情により、現在は、有耶無耶の状態です。 以前、このブログの「在来木造工法を考える」で、話したことがありますが、木造の構造については盲点が多く、簡単そうで難しいのが、この木造というものです。 もし、この特例が廃止されることになれば、建築的素養やモラルに欠けた建築士の淘汰が進むのは間違いないと思われます。
住宅の平均価格・坪単価
一戸建ての注文住宅はいったい、どのくらい費用がかかるのかという質問をよく受けます。新聞の折込広告では、建物本体価格が坪単価25万8千円であるとか、38万円であるかのような表示がよくされています。このような折込広告の影響もあってか、坪単価30万~40万×床面積40坪=1200万~1600万、余裕を見て、1000万台後半もあれば家は建つと思っている方々が少なからず、おられるようです。そこで、一戸建ての注文住宅の平均価格や坪単価について、今日はご説明したいと思います。
まず平成10年度の資料です。この頃は住宅金融公庫の融資が全盛でした。消費税が3%から5%に引き上げられた直後の頃で、バブル崩壊の余波もあり、景気は良くありませんでした。 平成10年度の住宅金融公庫融資の住宅で、木造軸組工法の全国平均総工事費は2,417万円、平均延床面積141.24/m2(42.6坪)です。 プレハブの平均総工事費は2,713万円、ツーバイフォーが2,512万円です。 また、外構工事費などを除いた建物本体の工事費の単価は、木造軸組で171千円/m2(566千円/坪)、プレハブ188千円/m2(622千円/坪)、ツーバイフォー184千円/m2(609千円/坪)となっています。但し、この坪単価は、地域により、ばらつきがあります。 http://www.jawic.or.jp/tech/qanda/016.php 今度は平成16年度の資料です。 全住宅の平均総工事費が2409万円、平均延床面積が135㎡(40.7坪)です。木造軸組工法の平均総工事費は2243万円、プレハブ工法は2745万円、工事費単価は全住宅平均で179422円/m2(594317円/坪)、木造軸組工法で167094円/m2(553482円/坪)、プレハブ工法で204149円/m2(676223円/坪)となっています。 http://www.mlit.go.jp/toukeijouhou/toukei06/geturei/10/geturei06-10t.pdf 以上、上記の結果をまとめてみると、建物の平均延床面積が40坪を若干上回るくらい、平均坪単価が55~60万程度、建物の平均総工事費が2000万台前半から2500万前後であることがわかります。 プレハブ工法が木造軸組工法と比較して高いのは、粗利幅の大きい大手ハウスメーカーが採用している工法であることに起因していると思います。 一戸建ての住宅は平均でどのくらい費用がかかるのかという一般的な質問を受けたとき、私は、平均実勢坪単価が55万前後、建物の延床面積が平均40坪強程度なので2000万台前半が茨城の相場ではないかと答えています。(これに外構工事が上乗せされます) 但し、平均実勢坪単価55万で、和風の化粧の家や、自然素材を随所に利用した建物が提供できる工務店もあれば、坪60万以上出しても、外装はサイディング、内装は全てビニールクロスであるハウスメーカーがあったりで、その内容は様々です。 地域密着型であまり販売経費をかけず安価であるけれども、センスには乏しい工務店であっても、お客様の意向を汲み取るのが上手で、かつ、コスト管理のできる設計事務所を施主の代理者として利用することによって、建物の内容は充実できますし、過大な販売経費をかける会社で建てれば、専門家から見れば、コストパフォーマンスに疑問が残る結果になりますので、細心の注意が必要だと思います。
階段を考える
階段からの墜落事故で亡くなられる方は、一年間に約500人程度で推移しています。骨折等の怪我を含めれば、その数倍以上の方が事故に合われていると推測されます。交通事故で亡くなられる方が現在約5000人ですから、その1/10にも上る方々が階段での不慮の事故で亡くなられている計算になります。階段を上り下りする時間と、道路を歩行したり自動車を運転する時間を比較すれば、圧倒的に階段の上り下りする時間のほうが短いわけですから、階段という場所がいかに危険であることがおわかりになると思います。
このような背景があったせいか、建築基準法では、約10年前に、階段には手摺を義務づけるなどの対策が取られました。10年以上前の住宅の階段には手摺のない物件が非常に多いのですが、このような物件に対しても、建築基準法を厳格に運用して、補助金を出してでも、その対策に取り組むべきであると思います。 折角の機会ですから、理想的な階段をご説明したいと思います。階段の用語で、「蹴上げ」と「踏面」があります。「蹴上」とは階段一段あたりの高さで、「踏面」とは文字通り、足を踏む面の長さのことを指します。 パブリックな場所、例えば、駅などの階段は、「蹴上げ」が150mm、「踏面」が300mm程度です。 「踏面」+「蹴上げ」×2=600 これが理想的な階段と言われています。 靴を脱いで上る階段、例えば、住宅の階段は、「蹴上げ」が170~180mm、「踏面」が225~250㎜が一番上り下りしやすい階段です。また高齢者を配慮して、一呼吸置くことができる踊り場があると便利です。このような階段の場合の段数は17段上がり前後になります。 また、一直線状態にある、いわゆる鉄砲階段を避け、折り返し階段やL型階段で上ることが階段の鉄則です。 階段の有効幅については、一般的な住宅で75cm程度ですが、この幅にたった15cmを足した90cm幅とするだけで、階段の印象が余裕あるものにガラリと変わります。そして、大きな荷物の上げ下ろしでは、その威力を十二分に発揮することになります。 また45~50坪以上あるような住宅ですと、階段有効幅75cmの場合、非常に窮屈な印象の階段になります。60坪以上あるような住宅展示場で、よくそのような狭い階段が見受けられますが、そのような住宅会社は設計力が無い会社と断じて間違いはないと思います。 狭小な住宅では、その全てを望むことは難しいのかもしれませんが、限られた空間のなかで、バランスよく遣り繰りすることが設計者の腕の見せ所であります。 安全性と密接な関係のある階段を大事に設計することの重要性をこれからも自ら再認識しながら、「たかが階段ではない」と訴えていきたいと私は考えています。
市街化調整区域とは?
市街化調整区域とは、都市計画法第7条で、市街化を抑制すべき区域と規定されています。それに対して、市街化区域とは、すでに市街地を形成している区域及び10年以内に優先的かつ計画的に市街地を図るべき区域と規定されています。
また、第43条で、何人(なにびと)も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、第29条1項二号若しくは三号に規定する建築物以外の建築物を新築してはならないとあります。 第29条1項二号の建築物とは、農林水産業の用に供する政令で定められた建築物、又は、これらの業務を営む者の居住の用に供する建築物を指します。 第29条1項三号の建築物とは、鉄道施設、社会福祉施設、医療施設、学校教育法による学校、公民館、変電所、その他政令で定める公益上必要な建築物を指します。 これらの建築物は、市街化調整区域においても建築することができます。 都市計画法は昭和43年に制定され、茨城県でも昭和45年以降から順次、「市街化区域」「市街化調整区域」の地域が指定されていきました。そのどちらにも指定されていない区域を「未線引き区域」と呼びます。 都市計画法で、「市街化区域」「市街化調整区域」のラインが線引きされて指定された日付を「線引き日」と呼称し、水戸市・土浦市・日立市などでは昭和46年3月15日、つくば市では昭和48年12月28日、取手市では昭和45年7月15日が「線引き日」になっていて、各自治体によって「線引き日」は異なります。 この「線引き日」以前から建っていた建築物については、原則的に建替えすることが可能ですが、その元々の用途を変更して建築することはできません。 市街化調整区域での建替えについては、問題はほとんど生じませんが、何も建物が建っていなかった土地、例えば、畑や山林に住宅や店舗などを建築しようとする場合は、数々の条件をクリアしなければなりません。 一戸建ての住宅を例に挙げます。近年緩和された区域もありますが、建設地は、建築しようとする者の2親等以内の親族が「線引き日」以前から、あるいは10年以上、本籍や住所を有していた大字もしくは隣接大字内での建築が基本になります。 また、建築しようとする土地が周辺に何も建物が無い状態では許可条件にはならず、70m以内の間隔で50戸程度の建物が連続していることが必要です。これをいわゆる「50戸連たん」と呼んでいます。その他、現在、借家に住んでいること、勤務先まで通うことができる範囲であることなどが条件になります。 先ほど申し上げた、近年緩和された区域とは、「エリア指定」と呼ばれる区域で、前面道路の幅員が規定以上・上水道が完備されているなどの条件が備わっている土地であれば、誰でも建築できる区域です。ただ、そのような区域は都市近郊で、だいぶ限定されています。 また、「線引き日」以前から建築物が建っていた宅地などで、市街化区域から約1km離れた地点から、「50戸連たん」が可能な区域でも、諸条件がありますが、誰でも、住宅・兼用住宅等を新築することができます。 以上が市街化調整区域で建築物を建てるにあたっての取扱いのごく一部です。調整区域の取扱いの基準は都道府県によって異なります。調整区域に建築するまでには役所との事前協議や許可の審査に数ヶ月を要することも珍しくありません。もうだいぶ以前の話ですが、用途は住宅ではありませんでしたけれど、私はその許可に2年を要した経験があります。 役所の建築指導課などで、建築や関連法規の知識を有しないけれども、建築をしたい方が、感情論で役所を責め立て、挙句の果てには、「行政はいつも対応が悪い」と捨て台詞を吐かれる風景をよく目にしますが、知識を有する者を代理人として立てて役所と折衝しなければ、丸く収まるものも、収まらなくなるわけです。裁判で、弁護士を立てずに独力で戦い、裁判長に、「裁判所は対応が悪い」と毒づくのと、まったく一緒です。建築主の代理人としての能力がある建築士を選んで、事を進めることは、弁護士を選任し裁判を円滑に進めることと同じだと思います。 以上、市街化調整区域の豆知識でした。
建築物の完了検査を考える
建築物を新築したり、10㎡以上の増築をする際には、建築確認申請を提出し、建築基準法に適合しているかの審査を受けなければなりませんが、その工事が完了した時は、速やかに完了検査の申請の手続きを行って、図面通り工事が行われているかの検査を受検する義務が建築基準法第7条に規定されています。
ところが、この完了検査の受検率は、平成20年度で全国平均91%で、ワースト一位である茨城に至っては75%です。つまり、茨城の1/4の物件が完了検査を受けずに放置されているのが現状です。 茨城の完了検査受検率が低い理由としては、依然として違法建築物が多いこと、そして、完了検査を受けなかったところで、建築主(施主)や施工業者にとって、特に大きな支障がないことが挙げられます。つまり、建築主は、完成すれば違法建築の家に住むことができますし、ほとんどの銀行の融資が滞りなく実行されるということです。 銀行融資のための書類として、確認申請が通った際発行される建築確認済証は必須ですが、完了検査に合格した際発行される「検査済証」は、都市銀行を除くほとんどの銀行で求められていないようです。 このような実態に行政も黙っているわけではなく、銀行融資の必要書類として、「検査済証」を含めるよう、だいぶ以前から要請はしているようです。また、建物を登記する際にも「検査済証」を必要とする体制となるように要請はしているようです。登記できなければ、銀行の抵当権が設定できませんので、融資が実行できなくなります。けれども、まだ行政の思惑通りには、事は進んでいないようです。 ところで、この完了検査ですが、検査時間は一般住宅では30分足らずで、本当に検査としての機能を果たしているかは疑問な部分も多いです。時間の制約もありますから、非常に甘い検査となっているのが実態です。つまり、大きな違法行為はおそらく見つけることができると思いますが、小さな違法行為や手抜き工事までは、目が行き届かないということです。 本来、工事が図面通り、合法的に、建築主(施主)の意向通り、手抜きなく行われているかを確認し、施工業者を監理するのは、建築士事務所に登録されている建築士ということになっています。いわゆる建築士の「工事監理業務」です。ところが、施工業者と建築士事務所が同じ会社である場合も多かったり、建築士事務所が施工業者の下請けとなることもありますので、建築主の利益を守るような「工事監理業務」が遂行されているかについては、非常に大きな疑問が残ります。 住宅・建築業界が消費者重視の体制となり、透明度の高い業界となるには、まだまだ時間がかかりそうです。
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