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設計者の想いの日々(ブログ)建築知識「新築」 「改築」「増築」の定義
「改築」という言葉は、一般的・世間的には、リフォーム・改修みたいなニュアンスで使われることが多いと思います。「増改築」という言葉も同じような意味合いで用いられているのが一般的でしょう。
ところが、建築の法令上、「改築」とは、一般的な建築物の建替え、つまり古い建物を壊して、新しい建物を建てることを意味します。但し、建替えることで、建物の用途が変わらない、あるいは規模・構造が大きく変わらない場合のみ、「改築」と呼びます。一般的な住宅の建替えはほとんど全て、「改築」でしょう。 これに対して、「新築」とは、建築物が無かった敷地に、例えば畑や分譲された土地に、建築物を建てることを意味します。また、建物を建替える場合で、従前の用途と違う、あるいは規模や構造が大きく違う建物を建替えする場合も、「新築」と呼びます。 一戸建ての住宅を壊して、再度一戸建ての住宅を建てれば「改築」、もしアパートを建てることになったら「新築」ということになります。 それでは、「増築」とは何か?簡単に言えば、建物の床面積を大きくすることです。一般的なイメージで言えば、同一建物に建て増しすることを意味すると思います。では、同じ屋敷内で、例えば住宅の母屋があって、「物置」を別棟で新しく建てる場合は何と呼ぶか?これは「増築」と呼びます。建築物の新築には間違いないのですが、住宅の母屋と新しく建てる「物置」が密接な関係にあり、用途上不可分な関係にあるので、建築の法令上では、「増築」と呼びます。 ついでに、「曳き家」について説明します。たまに、同じ屋敷内で、建物を動かすことを見たり、聞いたりされる方も多いと思います。これは、建築の法令上、「移転」と呼びます。但し、同じ敷地内での「曳き家」のみ、「移転」と呼びます。敷地が変わってしまう「曳き家」は「新築」となります。 建築物が「新築」「改築」「増築」「移転」それぞれの場合によって、法律の適用が変わったりするので、我々、専門家は、これらを厳密に区分けせざるをえません。例えば、一例を挙げると、市街化調整区域に、住宅を「改築」するのと「新築」するのでは、全く大違いです。調整区域での「改築」は、手続き上、とても簡単に済みますが、「新築」となると、様々な要件を満たしてはじめて、建築が許可となります。
図面に設計者氏名の記載は必ず必要
図面に設計者氏名の記載がないケースが多く見受けられます。このような図面が建築士法に違反していることは、世間的にあまり知られていないようで、契約前のプランニング段階であれば、有資格の設計者すら介在しなくてもよいと都合よく解釈している住宅会社が多く存在するのが実態です。工事請負契約後や建築確認申請の前段階で、やっと建築士が登場し、それまでは無資格の営業担当が、お客様と打ち合わせして、事実上の設計を行っている、このような法律を蹂躙するようなモラルない営業活動に翻弄される消費者の利益を守るために、住宅・建築業界を改善するよう尽くすことは、官僚・役人だけの仕事ではなく、良識を持つ建築士の役目であると私は考えます。
建築士法第二十条には次のように書かれています。 「一級建築士、二級建築士又は木造建築士は、設計を行つた場合においては、その設計図書に一級建築士、二級建築士又は木造建築士である旨の表示をして記名及び押印をしなければならない。設計図書の一部を変更した場合も同様とする。」 契約前であろうが、契約後であろうが、どのような段階であれ、営利目的で図面を作成することは、建築士事務所に登録された建築士の責任で行われなければならないということです。 ここからは専門的で、少々難しい話ですが、建築士法の話題が出たついでに、お話したいことがあります。建築士法第三条の三の条文には次のように書かれています。 「前条第一項第二号に掲げる建築物以外の木造の建築物で、延べ面積が百平方メートルを超えるものを新築する場合においては、一級建築士、二級建築士又は木造建築士でなければ、その設計又は工事監理をしてはならない」 この建築士法第三条の三の条文だけを読み、100㎡以下の木造住宅であれば、建築士の資格が無くとも、 設計できると勘違いしている建築士が多く存在していますが、これは大きな間違いです。建築士法の次の条文を読み落としています。 「第二十三条 一級建築士、二級建築士若しくは木造建築士又はこれらの者を使用する者は、他人の求めに応じ報酬を得て、設計、工事監理、建築工事契約に関する事務、建築工事の指導監督、建築物に関する調査若しくは鑑定又は建築物の建築に関する法令若しくは条例の規定に基づく手続の代理を業として行おうとするときは、一級建築士事務所、二級建築士事務所又は木造建築士事務所を定めて、その建築士事務所について、都道府県知事の登録を受けなければならない。 (かっこ書き略)」 「第二十三条の十 建築士は、第二十三条の三第一項の規定による登録を受けないで、他人の求めに応じ報酬を得て、設計等を業として行つてはならない。 2 何人も、第二十三条の三第一項の規定による登録を受けないで、建築士を使用して、他人の求めに応じ報酬を得て、設計等を業として行つてはならない。」 100㎡以下の自分自身の家を、自分の責任の元で設計することは建築士以外でも可能です。いわゆる直営と呼ばれるものです。けれども、他人の求めに応じ報酬を得て、業務として行うのであれば、どんなに小さな規模の建築物であろうが、建築士事務所に登録された建築士の責任の元で行わなければなりません。 ここで、問題になるのが、「建築士事務所に登録された建築士」ということです。つまり、建築士事務所に登録されていない建築士は、営利目的としての建築士の業務が出来ないことになります。ちなみに、建築士事務所に登録されていない建築士は、とても多く存在しています。このような建築士は、名刺に建築士と記載しても、単なる肩書きだけで、実際には建築士の仕事は出来ません。
屋根形状を考える
先日のブログで申し上げた通り、屋根の架け方は無数にあります。今年の夏、私は、建築士の資格を取得するための学校で、製図(二次)試験の非常勤講師をさせて頂いたのですが、そのとき痛感したのは、建築の実務をそれなりにこなしているにもかかわらず、屋根の架け方のイメージができないことで、建物のプランニングの幅を狭めている生徒が、思いのほか、多く見受けられました。そこで、屋根の架け方のノウハウというか基本について、少々、ご説明したいと思います。
下記の図は、一般的な屋根の架け方の名称になります。 このように、オーソドックスな「切妻屋根」、最近流行の「片流れ屋根」、一昔前は主流だった「寄棟屋根」、伝統的な和風住宅でよく見られる「入母屋屋根」、ビルの建物に多い屋上のある「陸屋根」、一部の建築家・設計者が馬鹿の一つ覚えのように多用する「R屋根」などに、大別されます。 総2Fあるいは平屋の四角い建物であれば、誰でも簡単に屋根を架けることができると思いますが、現実は、総2Fあるいは四角い建物ばかりというわけではなく、1Fより2Fが小さくなれば、必然的に1Fに屋根が架かりますし、平面形状が複雑になる場合は、どのように屋根を架けるのか迷ってしまう建築士が意外と多いのが本当のところです。 ここで、私が設計した物件を基に、屋根の架け方の具体例を挙げてみます。 この屋根は「入母屋屋根」と「切妻屋根」の複合体です。といっても、一般的な「切妻屋根」を変形してうえで、「入母屋屋根」を組み合わせています。1Fと2Fの屋根がそれぞれ独立させるのでなく、敢えて、交わるような形で納めて、屋根の一体感を表現しています。 黒い外壁部分は、ごく一般的な「切妻屋根」、白い外壁部分は、「片流れ屋根」で、正面見えているのは、「片流れ屋根」のいちばん高い部分になります。中央にある箱型の茶系のタイル貼の部分は「陸屋根」となっています。 伝統的な「入母屋屋根」が基本となる建物ですが、1Fの屋根形状は「寄棟屋根」になっています。この1Fの「寄棟屋根」は東西南北の四面にぐるりと回っていて、この1F屋根の架け方一つで、和風住宅の良し悪しが決まると言っても過言ではありません。 この建物も先述の通りの手法を取り入れた和風住宅です。 写真左側のほうで、2Fの平面形状が四角形でなく、一部張り出している部分があると思います。ここは階段部分なのですが、その屋根形状は、「母屋下り」「吹きおろし」という手法で処理しています。この手法を使用すると、天井高が十分に取れない場合がありますが、階段部分では、二階床より下がっているので、問題ないということになります。一番最初の冒頭でご紹介した物件も、「母屋下がり」の手法を取っており、2F屋根が1F屋根まで下がりつつある部分は、天井高が取れないので、納戸・収納に使用しています。 この物件は、だいぶ前に竣工したこともあり、写真を撮らず終いで、非常に私自身後悔しています。この建物は「陸屋根」、「切妻屋根」などの複合体になっています。R形状の平面部分の屋根は、6角形で納めています。 ちょっと話が長くなってしまいました。私自身、どのような平面形状であろうが、無数に屋根を架けることができると、ハッタリ半分で豪語することがありますが、屋根の架け方というものは、日本の伝統建築と密接な関係を持ちながら、未来に対しても、非常に建築の可能性を無限大に広げうるものであると私は考えている次第です。
増築と既存建物
既存の建物に、増築を行う場合、増築部分だけではなく、既存の部分においても、原則的に、現行の建築基準法に適合させなければならないことは、あまり知られていません。
昭和25年に制定された建築基準法は、何度となく改正されていて、特に、構造上の基準は、地震等の大災害を教訓に、1981年(昭和56年)と2000年(平成12年)に大改正されています。つまり、平成12年以前に建てられた建物に増築を行う場合は、既存部分も平成12年の建築基準法に適合させなければいけないわけで、増築する際に、既存部分も現行法に沿って改修することが必要になってくるわけです。 ちなみに、昭和56年の大改正の内容は、木造の場合、筋交い(壁量)の数の規定が大幅に強化されたこと、平成12年の場合は、筋交いをバランス良く配置すること、地耐力に応じた基礎形状の特定、柱脚と柱頭を計算により金物等で固定するなどが挙げられます。 「筋交いをバランス良く配置すること」とは、筋交いが北側に集中して、南側に大開口があるが故に筋交いがほとんどない建物が、1995年の阪神・淡路大震災で、南側部分が多く崩壊した教訓を踏まえたものです。つまり、筋交いは、北側と南側(あるいは東側と西側)にバランス良く配置しなさいというものです。 「柱脚と柱頭を計算により金物等で固定する」こととは、やはり、1995年の大震災で、柱が梁や土台に強固に固定されていないが故に、柱が引き抜かれた建物が多かったことを教訓にしています。 これらの改正された基準に、既存部分でも、増築する際に合わせて改修することが必要だったのですが、あまりにも酷だというわけで、最近の緩和規定により、「柱脚と柱頭を計算により金物等で固定する」ことは、既存部分では、除外されました。 昭和56年以前に建った建物は圧倒的に筋交い(壁量)が少なく、平成12年以前に建った建物は、南側に筋交いがあまり、存在しないものが多いのが実態です。 建築基準法が制定された昭和25年以前に建てた建物は筋交いすら存在しません。そもそも戦前に建てられた木造の建物は、「伝統工法」といって、現在の建築基準法の考え方とは、全く違っていますので、「伝統工法」を無理やり、現行法に適合させることに無理があると思います。(この辺のお話については、昨年11月11日付の「在来木造工法の構造を考える」で記載していますので省きます) このように、10㎡以上の増築を行う際、必要となる建築確認申請をする場合は、既存部分の安全性を現行法に沿って確認することが設計者・工事監理者に明確に課せられます。自分が設計・工事監理したわけではない既存部分の安全性を確認することの責任は、決して軽くはないものなのが事実ですので、ちょっとした増築であっても、慎重に設計・工事監理を行うことになります。
建築物の用途変更の手続き
建築物の用途を変更して使用するに先立ち、建築確認申請が必要なケースが多々あることは、一般的にあまり知られていません。建築物のなかでも、不特定多数の人々が出入りする「特殊建築物」と称されるものがあるのですが、用途を特殊建築物の用途に変更したり、あるいは特殊建築物の用途を別の特殊建築物の用途にする場合で、100㎡を超える際は、建築確認申請が必要となります。但し、類似の用途への変更の場合は、建築基準法施行令第137条の9の2に基づき、その必要はありません。
「特殊建築物」とは、建築基準法第2条二項、建築基準法施行令115条の3の規定で、学校、体育館、博物館、美術館、図書館、ボーリング場、スキー場、スケート場、水泳場、スポーツ練習場、病院、診療所、児童福祉施設等(高齢者・障害者の施設を含む)、劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場、展示場、百貨店、待合、料理店、飲食店、物販店舗、マーケット、キャバレー、カフェ、ナイトクラブ、バー、ダンスホール、市場、ダンスホール、遊技場、公衆浴場、旅館、ホテル、共同住宅、寄宿舎、下宿、工場、倉庫、自動車車庫、自動車修理工場、映画スタジオ、テレビスタジオ、危険物の貯蔵場、と畜場、火葬場、汚物処理場、その他これらに類するもので政令に定めるものを指します。 一戸建ての住宅、事務所、神社仏閣などは、特殊建築物には該当しません。 用途変更で間違いやすいのは、「物販店舗」と「飲食店」で、同じ店舗でも、建築基準法では、全く別用途になることです。例えば、コンビニを飲食店に用途変更する場合は、建築確認が必要になります。特殊建築物でない住宅や事務所を飲食店や物販店舗に用途変更する場合も、100㎡を超えれば、建築確認が必要です。 但し、市街化調整区域の場合は、用途変更するにあたっての要件は厳しくなります。100㎡以下の場合であっても、都市計画法の許可から必要になります。もちろん、市街化調整区域で認められている限られた用途以外への変更はできません。調整区域で認められている用途を説明すると長くなるので、今回は省きますけれども、よく、調整区域の空いたコンビニが事務所に転用されているケースを見かけると思います。これは、都市計画法上、違法です。 建築確認申請が必要な用途変更であるにもかかわらず、無断で用途を変更して、建築物を使用している場合は、行政に発覚した際、使用停止命令が下されることになります。
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