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設計者の想いの日々(ブログ)日本の杉材を見直す
もうすぐ、スギ花粉症に悩まされる時期になります。日本ではおよそ2500万人が患っていると考えられています。
日本の戦後の杉の植林事業により、杉の蓄積量は膨大の一途を辿っています。 林野庁によると、日本の杉を中心とする森林の年間成長量は約8千万m3である一方、国産材の供給量は年間約1,900万m3にしか過ぎません。 例えば、秋田県の杉林の面積と蓄積は日本一ですが、杉の蓄積量は約7800万m3、毎年の成長量は300万m3にのぼります。しかし、実際の消費量は49万m3で、成長量の1/6に過ぎず、しかも年々消費量は減少しています。 新潟県の森林資源も充実しています。新潟県で、戦後植林された杉人工林の面積が13万haに及び、一年間で成長する量は89万m3に達しています。 これは、1年間に新潟県で消費する丸太の量48万m3を十分に賄える量に当たり、丸太の需要を全て新潟の木で賄っても森林の蓄積が減ることはありません。 今回は、秋田県・新潟県を例に挙げましたが、全国各地、同じような状況に置かれています。 このようにして、杉の成長に伴い、杉の蓄積量が年々増え続けていますので、年々、スギ花粉症が深刻になっていくわけです。 現在、木材の供給量に占める国産材の割合(木材自給率)は、外材輸入量の増加と林業の採算性の悪化等による国産材供給量の減少により、20%程度に留まります。 杉や檜を育てる場合、苗を密集させて植え、地面の乾燥や風や雪による倒木を防ぎます。それを成長過程で間引き(間伐)して、密度を調節しながら育てます。しかし、間伐の時期が遅れ、密集したまま木が成長すると光が地面まで届かなくなります。暗い所では下草は成長できないので、土がむき出しになってしまいます。 この状態は「緑の砂漠」と呼ばれ、土地の保水力が乏しくなり、土砂が流出しやすいため、大雨などでの災害などの被害を受けやすくなります。今日本にはこういった「荒れた山」が増えています。 農家でいう収穫にあたる、杉の「主伐」を行わない理由は、昭和50 年代半ばから続く国産材の価格の下落で、木を売っても、伐って運び出す経費が賄えなくなっているのです。 これでは、すぐにはお金にならない山の手入れ、木の世話(育林)は、なおさら行われなくなります。 下草が生え保水力に富む森は、降った雨を少しずつ川に流す役割を果たします。ある山 奥の林業の村で大雨に見舞われましたが、そこを流れる谷川は急に増水することもなく、 水も濁りませんでした。 手入れが行き届かない山は、川にも影響を与え、川の問題は当然海の環境にも影響します。これを防ぐためには、伐った木を有効に使い、山にお金が戻るような経済の循環を取り戻す必要があります。 杉は無節にこだわなければ、決して高価な材料ではありません。そして、日本の気候や風土に合った材料であり、古来から、日本人と非常に密接な関係があります。 やや安価ではあるけれども、日本の高温多湿の気候に相容れない、耐久性に支障のある外国産の木材でなく、日本の杉をもっと見直しても良いのではないでしょうか。 「地産地消」の理念を掲げることは、日本の環境を守ることにつながり、世界の環境をも守ることになります。 イギリスのミュージシャンであるスティングは、「日本は自らの森林資源に目を向けず、経済性を追求し、外国の安価な森林を買い叩いて世界の環境を悪化させている」と正論を述べています。 スギ花粉症の到来を間近に控えた今の時期、設計者の一人として、微力ながらも、杉材の普及に努めていきたいと考える次第です。 杉材を多用した民家(桜川市真壁地区・重要伝統的建造物群保存地区)
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