設計者の想いの日々(ブログ)
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永井昭夫
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茶道具を作る



先日、江戸時代に書かれたと想定される図面を元に、茶道具の製作の監修のお仕事を承りました。この手の仕事は、誰でも出来るというものではなく、業者任せにすると、出来映えが思わしくなかったり、いくら費用がかかるのか、わかったものではありません。
いくらコストがかかってもいいのなら、良いものができるかもしれませんが、それでは面白くありません。創意工夫で知恵を絞って、お手頃価格で良いものを作ってこそ、意義があると私は思っています。お金は大事なものであり、それを生かすも殺すも、人次第なのです。
世の中、高級住宅と称されるものは、多く存在していますが、金額だけは高級住宅で中身は凡庸で、何も伝わってくるものが無かったり、あるいは、高価な材料を使っているのは非常にわかるのですが、お世辞にも趣味が良いとは言えない代物になっているようなことが頻繁に見受けられるのは、非常に残念なことです。

今回承った茶道具は、杉の無垢材と黒竹・晒し竹・胡麻竹(錆竹)だけで作ります。細部にわたって納まりを検討していきますので、実際に製作する大工職人にとっては大変な作業になるでしょう。
現在、大工も伝統技術の継承が危ぶまれていて、工場で出来上がってきたものを組み立てていくだけの「組立木工職人」に成り果てている者が主流になりつつある状況にあります。
「鉋(かんな)」や「のみ」などの道具を使って、荒木の状態からから加工して、綿密に造り上げていくのは、本来の大工の職域だったはずですが、時代の流れと合理化という名のもとに見捨てられようとしています。「組立木工職人」が幅を利かせ、本来の大工のあるべき姿である「加工職人」が希少価値になっていくのは、見るに忍びないものがあります。
今回の茶道具の製作も「組立木工職人」では出来ません。「加工職人」が「組立木工職人」に技術を継承するような機会を与えていく状況を作ることが、設計者の一人としての、私自身の使命であると考えています。
カテゴリ:建築文化・伝統 2010年12月6日(月)

設計料を考える

たまには自画自賛をしたいと思いますが、寛大なお心でお読み頂けると幸いです。

当設計事務所では、設計料が高いと言われたことがほとんどありません。もっとも、設計料が高いと思われる方からのご依頼が来ないのかもしれませんが・・・。

では、なぜ、お客様に割安感を感じて頂けるのか?あるいは、実際に安くできるのか?
それを自画自賛しながらも、冷静に分析してみます。

①単純に、金額に見合うだけの内容がある。
②当設計事務所が施工会社の見積書の内容を精査して、お客様の代理となって金額面の交渉をする。つまり、そのことで、工事費の10%に満たない設計料の元を取ることが可能。
③営業経費をあまりかけていない。
④受注率が高い(90%以上)ので、受注のための労力を費やしていない。
⑤当たり前の話ですが、設計料の焦げ付きがない。
⑥他の会社や事務所が30人分の労力がかかるところを、当設計事務所では数分の一の労力で話が済む。つまり、半年かかってプランがまとまらない案件を、当事務所では、一ヶ月でまとめることも可能。(細かい変更を除いて)

などが挙げられると思います。

そして、さらに設計料を安くする方法、いいえ、無料にする方法もあります。

それは、施工会社である工務店や建設会社、あるいはその下請となる協力業者からバックマージン(現玉)を貰うことです。

民間の取引の場合、公共工事と違って、バックマージンを貰ったところで、法に触れることはありません。けれども、この行為はお客様に対する背任行為であって、施主の代理人であるべき設計事務所にとって、許されないことだと思います。ただ、この手の誘いが設計事務所に対して、お客様の陰で横行していることは事実です。

結局、設計と施工の境界がはっきりしていないと、工事金額も不透明でわかりにくくなっていくのが、住宅・建築業界を冷静に鑑みての、私としての実感です。
ハウスメーカー・ビルダーの場合、その境界はありませんので、設計料無料あるいは格安に設定できるわけですが、以前、このブログで申し上げました通り、その見積書ほど、曖昧で不透明なものはありません。

今日はとりとめのない内容となってしまいました。

当設計事務所の業務内容と設計料の目安については、下記に掲載しておりますので、機会がありましたら、お読み頂けると幸いです。
設計・監理料
カテゴリ:建築雑感 2010年12月5日(日)

建築基準法の道路の規定について

都市計画区域内で、建築物を建てる場合、道路に2m以上接していなければなりません。以前に申し上げた通り、山奥でないほとんどの地域が都市計画区域内に指定されていますので、建築物を建てたり、10㎡以上の増築をして建築確認の申請をする場合は、道路に接していることが建築基準法第43条で義務づけられています。都市計画区域外の地域では、その限りではありません。
都市計画区域を定める都市計画法は昭和43年に制定され、順次、都市計画区域は拡大していきました。
都市計画法が無かった時代、あるいは都市計画区域に指定されていなかった時期に建てられた、特に専用住宅については、道路に接していない例もあり、この場合、建物を建て替えたり、増築することができなくなります。

また建築基準法上の道路は原則的に、4m以上の幅員が必要です。もし、4mに満たない道路に接する場合に、建築物を建替えなどする際には、道路中心線から2m後退した線が道路境界とみなされます。もし、道路中心線から2m以内の部分に塀や生垣があったりする場合は、支障物とみなされて、撤去しなければ、自治体によっては、建築確認申請が通りません。また、建築完了後に義務付けられている完了検査に合格することができなくなります。
では、敷地が後退したことで、建築基準法上の道路になった部分の所有権はどうなるか?
とりあえず、所有権が道路管理者である自治体に移ることはありません。自治体が道路として買い上げてくれるのを待つか、あるいは交渉して早めに買い入れるように申し立てるしかありません。

あと、これは茨城県の建築条例ですが、旗竿状の敷地、つまり路地状の専用通路がある敷地の場合、制約があります。20m以上40m未満の路地状の専用通路の幅員は3m以上、40m以上の路地状の場合は4mの幅員が必要となります。この条例も都市計画区域内でのみ適用されます。この条例のこの規定については、他の都道府県と比較して非常に厳しく、建替えの出来ない例が多く発生したことから、建替えや増築の専用住宅や兼用住宅の場合に限り、10年前に条件付で緩和されました。

以上、建築基準法の道路の規定に関する豆知識でした。
カテゴリ:建築知識 2010年12月3日(金)

適材適所と長期優良住宅

「適材適所」という言葉の語源は、木材の使い分けから生まれた言葉と云われています。
豊富な森林資源に恵まれてきた日本では、針葉樹・広葉樹などの多くの木材が、「適材適所」に使用されてきました。
例えば、土台には白蟻に強く、耐久性の高い赤身の檜や栗を使用し、柱には垂直荷重に強く耐久性があり豊富に採ることができて、見た目も美しい杉や檜が多用され、梁には強靭な曲げ強度を持つ松が使用されてきました。

もちろん、木材は自然素材ですから、同じ樹種でも、一本一本素性が違います。強度の期待できない目の粗い木材は、建築物の構造上、負担のかからない位置に使用したり、構造材として仕入れたとしても、強度上問題ある木材は使用せず、内装材や造作材として転用したりして、創意工夫を凝らしながら、建築物を造り上げていきました。大工が木材の素性を一本一本吟味しながら、木材を刻み加工してきたのが、日本の長年の建築の歴史です。

ところが、昨今の情勢では、柱や梁などの構造材の加工を大工が行わず、プレカット工場に任せることが主流になってきています。ハウスメーカー・ビルダーでは100%が安価なプレカット工場を利用しています。もちろん、機械による加工ですから、刻みは正確なのですが、木材が適材適所に使われているかということについては、大きな疑問が残ります。
工場の生産ですから、効率性を追求するあまり、木材の素性を吟味せず、次から次と加工ラインに乗せてしまうやり方が幅を利かしているのが現状です。プレカット工場でも大工が立ち会って、木材を吟味しながら加工していくのなら問題は生じないとは思いますので、設計者として、私はプレカット工場を全面否定はいたしませんが、大工が親身に立ち会うようなプレカット工場はあまり存在しないのが本当のところです。

このような時代の趨勢の中で、国の施策として、長期優良住宅の普及が叫ばれていますが、木材が適材適所に使われずに、本当の意味での長期優良住宅が実現できるのか、甚だ疑問です。
また、柱の育った年数が建物の寿命とよく云われます。長期優良住宅を謳うならば、柱も最低70~80年以上育ったものを使用していくのが本当だと思いますが、断面寸法が所定の120mm角以上あれば、30年物の柱を使用したとしても長期優良住宅で認定されてしまうことにも大きな矛盾を感じます。

「適材適所」の本来の意味を考え、原点に返ることの必要性が現在の住宅・建築業界には必須であると、設計者の一人として、私は考えています。
カテゴリ:建築構造・性能 2010年11月28日(日)

建築確認申請

都市計画区域内で、「建築物」を新たに建てたり、10㎡以上の増築をする場合は、建築確認申請を提出することが建築基準法で義務づけられています。山奥のような人里離れた地域などでない限り、現在では、ほとんどの地域が都市計画区域内に指定されているのが現状ですから、「建築物」を新設する場合は、まず建築確認申請が必要と言っていいでしょう。

では、「建築物」とは何か?
屋根があって、柱もしくは壁があり、土地に定着する工作物
のことを指します。

では、土地に定着する工作物の定義とは何か?
プレハブ小屋を置くだけのように、きちんとした基礎が無ければ、土地に定着しないのか?
基礎があろうが無かろうが、屋根や壁のある工作物で、人間の営みが認められれば、それは、土地に定着する「建築物」です。

極端な例を挙げれば、トレーラーハウスで電気や水道を引き込んで、そこで人間が生活をすれば、それはもう立派な「建築物」で、建築確認申請が必要です。当然、プレハブ小屋を置いて、店舗や選挙事務所を開いたり、倉庫に使用する場合でも、「建築物」扱いされますので、建築確認申請が必要です。プレハブ小屋を置く期間が短かろうが、長かろうが、一緒です。
基礎が無く、地面に置いただけのプレハブ小屋は「建築物」ではなく、建築確認申請も必要が無いというのは、とんでもない誤解で、逆に、基礎が無いことで、構造上支障があると判断され、違法建築物扱いされます。
但し、例外があって、地震などの非常災害があった場合の仮設の建物や、工事現場にある事務所や資材置場については、建築確認申請の必要はありません。

以上、建築確認申請の豆知識でした。
カテゴリ:建築知識 2010年11月26日(金)
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