設計者の想いの日々(ブログ)
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永井昭夫
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屋根形状を考える

先日のブログで申し上げた通り、屋根の架け方は無数にあります。今年の夏、私は、建築士の資格を取得するための学校で、製図(二次)試験の非常勤講師をさせて頂いたのですが、そのとき痛感したのは、建築の実務をそれなりにこなしているにもかかわらず、屋根の架け方のイメージができないことで、建物のプランニングの幅を狭めている生徒が、思いのほか、多く見受けられました。そこで、屋根の架け方のノウハウというか基本について、少々、ご説明したいと思います。

下記の図は、一般的な屋根の架け方の名称になります。


このように、オーソドックスな「切妻屋根」、最近流行の「片流れ屋根」、一昔前は主流だった「寄棟屋根」、伝統的な和風住宅でよく見られる「入母屋屋根」、ビルの建物に多い屋上のある「陸屋根」、一部の建築家・設計者が馬鹿の一つ覚えのように多用する「R屋根」などに、大別されます。
総2Fあるいは平屋の四角い建物であれば、誰でも簡単に屋根を架けることができると思いますが、現実は、総2Fあるいは四角い建物ばかりというわけではなく、1Fより2Fが小さくなれば、必然的に1Fに屋根が架かりますし、平面形状が複雑になる場合は、どのように屋根を架けるのか迷ってしまう建築士が意外と多いのが本当のところです。

ここで、私が設計した物件を基に、屋根の架け方の具体例を挙げてみます。


この屋根は「入母屋屋根」と「切妻屋根」の複合体です。といっても、一般的な「切妻屋根」を変形してうえで、「入母屋屋根」を組み合わせています。1Fと2Fの屋根がそれぞれ独立させるのでなく、敢えて、交わるような形で納めて、屋根の一体感を表現しています。



黒い外壁部分は、ごく一般的な「切妻屋根」、白い外壁部分は、「片流れ屋根」で、正面見えているのは、「片流れ屋根」のいちばん高い部分になります。中央にある箱型の茶系のタイル貼の部分は「陸屋根」となっています。





伝統的な「入母屋屋根」が基本となる建物ですが、1Fの屋根形状は「寄棟屋根」になっています。この1Fの「寄棟屋根」は東西南北の四面にぐるりと回っていて、この1F屋根の架け方一つで、和風住宅の良し悪しが決まると言っても過言ではありません。



この建物も先述の通りの手法を取り入れた和風住宅です。
写真左側のほうで、2Fの平面形状が四角形でなく、一部張り出している部分があると思います。ここは階段部分なのですが、その屋根形状は、「母屋下り」「吹きおろし」という手法で処理しています。この手法を使用すると、天井高が十分に取れない場合がありますが、階段部分では、二階床より下がっているので、問題ないということになります。一番最初の冒頭でご紹介した物件も、「母屋下がり」の手法を取っており、2F屋根が1F屋根まで下がりつつある部分は、天井高が取れないので、納戸・収納に使用しています。



この物件は、だいぶ前に竣工したこともあり、写真を撮らず終いで、非常に私自身後悔しています。この建物は「陸屋根」、「切妻屋根」などの複合体になっています。R形状の平面部分の屋根は、6角形で納めています。


ちょっと話が長くなってしまいました。私自身、どのような平面形状であろうが、無数に屋根を架けることができると、ハッタリ半分で豪語することがありますが、屋根の架け方というものは、日本の伝統建築と密接な関係を持ちながら、未来に対しても、非常に建築の可能性を無限大に広げうるものであると私は考えている次第です。
カテゴリ:建築知識 2011年11月19日(土)

京都と茨城と建築家



この画像は、京都の源光庵です。丸窓と角窓があって、丸窓が「悟りの窓」、角窓が「迷いの窓」と呼ばれています。建築物と自然が見事に融合した、日本の誇りとも言うべきこの画像を、どこかで見たことがある方々も多いことでしょう。

最近、震災後の諸事情で、なかなか京都に行くことができませんが、京都は日本文化の宝庫であって、かつ根源であり、京都から茨城に帰ってくると、京都との文化や県民性の違いに、がっかりすること、しばしです。京都と茨城(あるいは東京)では、時間の流れ方が違ってます。「短気は損気」、この言葉は、私自身も含め、茨城県人への戒めとして、重く受け止めるべきなのは間違いありません。

私の職業で言えば、今の建築家(設計士)は、自らの乏しい感性を妄信して酔っている方々が非常に多く、日本の伝統を敢えて忌避し、アーティスティック(artistic)な言葉や似非現代性に逃げている方々が多く散見されます。無数にある屋根の架け方一つまともにできず、プラモデル程度の模型作成や、スケッチと称するお絵描きなどで、芸術家気取りでいられる建築家と称する商売人は、京都にしばらく缶詰在住でもして、頭を冷やして一から出直すべきであると、私は思っています。
いくら日本のグローバル化が進んだとは言えども、日本の建築は日本の文化そのものであり、日本の伝統からは決して逃げることはできません。そして、建築とは決して芸術作品などではなく、とてもお金が必要な実用品であり、自己完結型の芸術を追い求めるならば、建築の世界から一刻も早く去るべきなのです。
カテゴリ:建築文化・伝統 2011年11月12日(土)

和室の設え

先日、つくば市で行われた家造り展示会での、組立式和室の展示の様子
です。

和室の備品関係 produced by 永井昭夫



 
カテゴリ:建築文化・伝統 2011年11月7日(月)

建築と文学

建築と文学は全く関連性がないと思われがちですが、とても密接な関係があります。下記の格言は、謎かけのような格言ばかりですが、私自身、お客様との打ち合わせを行うにあたって、含蓄ある言葉ばかりであると感じています。
以下、太宰治の格言をご紹介したいと思います。

・「甘さを軽蔑する事くらい容易な業は無い。そうして人は、案外、甘さの中に生きている。他人の甘さを嘲笑(ちょうしょう)しながら、自分の甘さを美徳のように考えたがる。」

・「自信とは何ですか。」
「将来の燭光を見た時の心の姿です。」
「現在の?」
「それは使いものになりません。ばかです。」

・「生活とは何ですか。」
「わびしさを堪える事です。」

・「議論とは往々にして妥協したい情熱である。」

・「きょうは、少し調子づいているようですね。」
「そうです。芸術は、その時の調子で出来ます。」

・「自己弁解は、敗北の前兆である。いや、すでに敗北の姿である。」
カテゴリ:建築雑感 2011年11月5日(土)

震災から約8ヶ月…

さて、震災の影響による、壮絶な現場を、8ヶ月経過した現在でも、いまだに見る機会があります。
先日は某ディーラーの店舗兼整備工場です。
ショールームの外部に面するガラスは全て割れ、天井は落ち放題、床は大きな段差だらけ、建物の裏にある高台の崖を留める4m近い高さの擁壁は15°以上傾き、今にも建物に向かって倒れそうなオーラを発しています。
道路を自動車で走っている分には、誰にも気にもとめず、通過してしまうような建物ですが、このように、一歩、建物のなかに踏み入れば、まさに驚愕の世界が待っています。
震災以来、トラウマとなるような現場を数多く見てきて、建築士とは、人間の命を預かる仕事なんだなと率直に思った次第です。
ちなみに、私の設計した物件は、ほとんど被害ゼロです。クロスや塗壁などの内壁のひび割れは被害のうちに入らない前提ですけどね…。ただ、運が良かったせいもあると謙虚に受け止めたいと思います。
(民間物件の被害状況の写真は、私は絶対に公開しませんので、ご了承ください)
カテゴリ:東日本大震災・竜巻・災害 2011年11月5日(土)
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