設計者の想いの日々(ブログ)
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永井昭夫
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住宅・建築業界

大手ハウスメーカーの平均坪単価



上記は住宅業界の専門家向けに開催されたセミナーの資料で、大手ハウスメーカ-の平均坪単価です。特に凝った住宅というわけでなく、あくまで、ごく一般的な普通の家の単価です。
大手ハウスメーカーの販売価格に対する工事原価の割合は5~6割です。つまり、3000万の家だったら、1500~1800万程度しか、実際の工事には割り当てられていません。
その他4~5割は販売などの経費となります。

建物の内容と比較して、大手ハウスメーカーのコストパフォーマンスは格段に落ちますが、「大手のブランド力」や「イメージ戦略」が、高価格をカバーしていることになるのでしょうか。

けれども、本物を志向する建築士から本音を言わせて頂くのであれば、「大手のブランド力」や「イメージ戦略」は、単なる「幻想」に過ぎません。

それが「幻想」であることに気がついたお客様にとって、これからも、当設計事務所はお役に立てる存在でありたいと、私は考えています。
カテゴリ:住宅・建築業界 2012年11月17日(土)

建設業の許可について

建築業者あるいは各種専門工事業者が、ある一定の金額以上の工事請負契約を消費者と交わす場合、建設業の登録が必要です。それは「建設業法」という法律で定められています。
こんな当たり前のことをわざわざ書きたくないのですが、無許可の業者が後を絶たない現状に忍びありませんので、敢えて詳しく書き記したいと思います。

住宅などの建物の新築工事をまるまる一式請け負う「建築一式工事」の場合、1500万以上の請負金額となれば、建設業の登録が必要です。

外壁などの塗装工事、屋根の葺き替え、太陽光発電などの各種専門工事を請け負う場合は、500万以上の請負金額となれば、専門工事の建設業の登録が必要です。
各種専門工事は、26区分に分かれ、塗装の場合は「塗装工事」の建設業の許可、屋根は「屋根工事」、太陽光発電は「電気工事」の建設業の許可が必要です。
その他、「大工工事」、「管工事」、「タイル工事」、「板金工事」、「鉄筋工事」、「舗装工事」、「左官工事」、「石工事」、「とび土工コンクリート工事」、「内装仕上工事」、「建具工事」、「造園工事」などがあります。

住宅などの「建築一式工事」を、建設業無許可の業者に依頼した場合、法的に義務付けられている「瑕疵担保保険」に入ることが出来ないケースが頻発していますので、ご注意下さい。

ちなみに、無許可で建設工事を請負った業者は、3年以下の懲役または300万円以下の罰金刑を科せられます。

ついでの話ですが、「建設業法」とは別の法律で、電気工事業を営む業者は、「電気工事業の業務の適正化に関する法律」により、電気工事を請け負う場合、金額の大小の如何を問わず、「電気工事業」の登録が必要です。
これは、感電や電気火災の危険の発生の防止するために設けられている法律ですが、現在、流行している「太陽光発電」の設置工事は、「電気工事業」の届出が必要となります。
いまどきの販売力重視の太陽光発電設置業者については、「電気工事業」の届出をして居ないケースが、相当数、頻発しておりますので、この点も、くれぐれ、ご注意ください。
カテゴリ:住宅・建築業界 2012年10月17日(水)

住宅業界の二極化

昨日は建築士試験の試験官でした。
受験者数はこの10年で半減です。
あと数年で、一級建築士合格者より司法試験合格者の方が多くなるかもしれません。
建築士は団塊の世代前後の方々に非常に多く、あと5~10年で引退する方も少なくないでしょう。
年々、建築士の責任が重くなり、業務も多肢に渡っている一方で
画一的・工業的・インスタント食品のような建築も増えています。
今の住宅業界はインスタントラーメンをイメージ・ブランド戦略で500円で売ろうとするものが多いのが現状です。
インスタントラーメンを150円で売る住宅会社もありますが、いずれ食傷気味となって飽きられるのを延々と繰り返しているのが現在の趨勢ですね。
優れた技術を持つ建築士や、日本の伝統を継承してきた大工などの職人がこれから急激に減っていくなかで、これからの住宅業界がどのような方向性に進むのかと言えば、益々、二極化が進行していくことでしょう。
つまり、建築技術やコストパフォーマンスを大切にしながらの本物志向のものを作り上げていく地道な方法と、販売に重きを置いたインスタント商品の大量な普及ですね。
カテゴリ:住宅・建築業界 2012年7月23日(月)

安易な地盤調査と地盤改良に警鐘を鳴らす

現在の住宅の地盤調査では、ほとんどがスウェーデン式サウンディング試験という簡易的かつ安価な方法で行われています。このスウェーデン式サウンディング試験も、以前は手動式や半自動式が主流でしたが、最近は自動化・機械化が進み、地質の知識が全く無い者でも操作できるような試験方法に変わってきました。
元々、このサウンディング試験、その精度には難があり、補助的な地盤調査資料として、あるいは、軟弱地盤かどうかの目安を確認する程度のものでした。土質を判別するに十分な地中の土を採取することが出来ないのが最大の欠点です。
近年、スウェーデン式サウンディング試験の自動化・機械化が進んだことで、その試験の精度が上がったという誤解が、巷間、まかり通っているようですが、それは全くの誤りで、安全側に過剰に反応するこの自動的試験のお陰で、半数以上の敷地で、地盤改良が必要であるという不可思議な結果が生じています。
このサウンディング試験では、一般的に、25cm毎に、その地層の持つ強度を現す数値(換算N値)を算出して、5~10m位までの深さまで、結果表にまとめられています。
但し、このサウンディングの最近の自動式試験は、実際には、1cm毎にその結果を算出することが出来るようです。つまり、25cm毎に、換算N値を算出していくに当たって、その論拠となる数値は25個あるわけですが、その25個のなかでも最悪の数字を採用して、地盤調査の結果表を作成しているようなのです。
地盤が建物を支えるに当たっては、たった1cmの地点が建物を支えているのでなく、全体的な面として支えているわけですから、1cm毎に25通りの結果が出されたならば、その25通りの平均の数字が妥当な数値であるべきです。それが建築構造計算にあたっての常識的考え方です。

このサウンディング試験、一つの敷地につき、4~5ヵ所のポイントで測定が行われますが、結論から申し上げると、たった一ヶ所のポイントで、1cmでも悪い部分があれば、地盤改良が必要という結果を人為的に導き出されることが非常に多いようです。
こんな人為的な結果は、いわゆる「シロアリ悪徳商法」と何ら変わるところはないと私は思います。無料もしくは格安で床下を点検し、業者が勝手に白蟻を蒔いて、すぐ駆除工事をしないと大変なことになるっていう詐欺商法です。
このスウェーデンサウンディング自動化試験も、原価では3万程度で、格安に設定されています。普通に考えて、こんな金額で出来るはずはないのですが、その後の地盤改良工事が控えているので、そこで十分に元が取れるということでしょう。

このような理不尽な地盤調査方法がまかり通っているのは、まず、地盤調査を行う会社
が地盤改良工事をも、請け負ってしまうことが原因です。
こんないい加減な調査方法で、無駄な地盤改良工事が日常茶飯事に行われている現実について、疑問を呈している者は、建築の素人で多くを占められている現在の住宅業界のなかに於いて、皆無に近いのが現状です。
また、住宅会社にとって、この地盤改良工事が大きな追加工事として利潤を確保できる側面があることも、現在の地盤調査の安易なあり方に拍車をかけているのではないでしょうか。

保険の意味で、仮に必要性が無かったとしても、地盤改良工事をしておけば、何かと安心という考え方もあるでしょう。
ところが、この地盤改良の大半の工事について、将来、私たちの子孫に、非常に大きな問題を残すことが明白なのです。
一番、安価な地盤改良工事として、柱状改良というものがあります。地盤にセメントミルク(セメント+水)を注入して、土と攪拌して、直径60cmの柱を、4~5mの深さまで作るものです。平均的な住宅の床面積の建物で、この柱というか杭は、30~40本作られます。
問題となってくるのは、この柱状改良の寿命です。例えば、50~100年後に家を建替える際、この柱状改良が再利用できるかというと出来ません。かといって、この柱状改良を撤去するのも、やってやれないことはないでしょうが、大変な工事と金額になることでしょう。また、この柱状改良杭を避けて、新しい建物を配置することも非常に難しいでしょう。
つまり、産業廃棄物が埋められた土壌を子孫に残すということになります。あるいは土地を売却しようにも、そのような汚染された土地では、それも難しいでしょう。
ちなみに、この柱状改良された地盤で、先の震災において、基礎の不同沈下の被害が多く報告されています。
安易な地盤調査と地盤改良は、貴重な財産を失いかねない行為ですので、当設計事務所としては、現在のこのような趨勢を憂慮し、警鐘を鳴らさざるをえません。
カテゴリ:住宅・建築業界 2012年3月25日(日)

無限の世界に耐え得ること

家造り、あるいは、広義の意味での「建築」にしても、答えは無限にあります。もちろん、諸条件・価値観・美意識・予算などの制約はありますが、それでも、答えは無限です。
日本の教育の、理系・文系という大きな括りのなかで、「建築」は理系の部類に入り、「建築」に携わる者、特に建築士は、理系的素養を要求されます。理系的な考え方の特徴として、答えを限定的に考える、極端に言うと、一つにしたがる傾向にあります。「1+1=2」の世界です。性格上、答えが無限にある世界に耐えることができないわけです。
その傾向は、「建築」に携わる者でも、特に若年層に顕著で、例えば、学校で、この先生は、このように言ったけれど、あの先生は違うことを言ってるのを許容できないのです。ある程度の経験を経れば、どちらの先生の言ってることも正解なのはわかるはずなのですが、どちらかに決め付けてしまって、さっさと混沌の世界から抜け出したがる傾向は、文系の学生より、理系の学生のほうが、はるかに強いと言えます。
本来、このような性格の者は、無限で混沌としている「建築」の世界には向いておらず、後年、様々な実務経験を経て、矯正されていくような柔軟性を持ち合わせていればいいのですが、必ずしもそうではないのが現実です。ここに「住宅・建築業界」の悲劇があります。
無限に耐え切れない性格の者が「建築」に携わり、自らの引き出しを広げようとする努力を怠り、「住宅・建築業界」の一翼を担った結果、工業的・画一的建築物が氾濫し、日本の伝統文化を破壊する遠因となっているのは、否めない事実です。
カテゴリ:住宅・建築業界 2011年12月21日(水)
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