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設計者の想いの日々(ブログ)伝統技術の継承
不景気による住宅・建築業界の低迷、そしてローコストメーカーの急激な台頭、過当競争による営業経費増大傾向が原因の工事原価の圧迫などの要因で、大工・設備工事など様々な職種で価格破壊が進んでいるようです。大工工事の坪単価に至ってはこの十数年で半分近くになっています。大工さんもなかなか自力で仕事が取りにくい昨今、生活のためハウスメーカーなどの下請業者となって、世間の平均賃金を大きく下回る安い手間賃で我慢している方々が多いのが現状です。
現在、大工さんは団塊の世代前後、つまり60歳前後以上の世代を中心に、高度な技術を身につけた職人気質の方々が沢山おられます。 柱や梁など構造材の「刻み」つまり加工は10数年前までは大工さんが手作業でやっておられましたが、次第にプレカット工場での加工が主流となり、昔ながらの高度な技術の継承が難しい情勢になっています。 また「木部」を現した昔ながらの化粧造りの家、いわゆる和風の住宅も高度な技術が必要で、「のこぎり、かんな、のみ」など沢山ある道具の管理も大変です。大工さんがこのような高度な技術を身に付けるためには、どんなに最低でも十年以上はかかります。 けれども、昨今の情勢では、大工工事の坪単価の急落により、辛い修行をしてまで大工を志す若者は減ってしまうでしょう。 そして団塊の世代の大工さんが大量に引退する時期はそれほど遠い先のことではありません。 つまり、今は日本の伝統技術の継承の危機にあるのです。何百年以上も続いた伝統の継承もできないで、日本の未来はあるのでしょうか? 確かに時代に合わせて、合理化しなければならない側面があるのも事実です。また大工さんの「俺に任せておけ」という悪い意味での「意地」が現在の多様化した価値観を持つ消費者に対応できなくなっているのも事実です。ベニヤ板や方眼紙に簡単な間取りを書いて、それをお客さんに見せて、「これでどうだい?」と確認する時代錯誤な大工がいるのも事実です。面倒なことを要望するとすぐ嫌な顔をする大工がいるのも事実です。 そのような大工さんの様々な悪い側面をカバーして消費者たるお客様を守っていくのが私たち設計・監理者の役目であると思います。そして、純粋な意味での、「伝統技術の継承」を何が何でも死守していく方策を取ることが建築士としての急務な課題です。 「価格破壊」は結構なことかもしれませんが、「伝統破壊」がこのまま進めば、「日本破壊」につながりかねないのでは?と思います。
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