設計者の想いの日々(ブログ)
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六角堂再建への異議申し立て

東日本大震災の津波で流失した岡倉天心ゆかりの国登録有形文化財「茨城大学五浦美術研究所六角堂」(茨城県北茨城市大津町)の再建を目指す茨城大は、福島県いわき市の山林から建設資材となる杉の原木を搬出し、目標とする3月中の再建へ一歩前進した。一方、原木を寄付した男性は「売れない木がお役に立つなら名誉なこと」と笑顔を見せた。「茨城の復興のシンボルに」と関係者の期待も大きい六角堂再建。プロジェクトが本格的に動き出した。
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120122/dst12012207000003-n1.htm

さて、この記事、震災復興に向けての前向きな内容であると大多数の方々は思っているかと思います。ここで注意しなければいけないのは、建築資材となる原木の伐採が今年1月中旬であること、再建される六角堂の竣工が今年3月いっぱいであることです。つまり、原木を乾燥させるための期間があまりにも短いのです。原木から製材されて、どんな短くとも半年は乾燥期間が必要なのにもかかわらず、この記事を読む限りは、たった2週間です。管理元である茨城大に、茨城県建築士会が協力して再建に当たっているということですが、国の文化財を再建するにあたって、工事があまりも杜撰であると言っていいでしょう。
技術の進歩に伴い、人工乾燥という手立てがあるのではないかという意見もあることでしょう。確かに人工乾燥の釜に入れれば、含水率を下げることも出来ますが、木の持つ脂身まで失うこととなり、木材の内部の割れが生じるなど、多くの問題を抱えます。また大工の手刻みが多く必要とされる神社仏閣の建物において、人工乾燥の木材では、粘りがないので、手刻みでは弾き易く、欠けてしまうことがあり、固くパサパサな状態の木材を刻むのは非常な困難な状態になります。
まともな建築関係者であれば、こんなことは常識なはずですが、それを3月中に竣工という強硬手段を取るのは、茨大もしくは茨城県建築士会に、「まず工期ありき、復興ありき、品質はどうでも良い」という考え方が根底にあるのではないでしょうか。私も茨城県建築士会の会員の一人として、非常に恥ずかしく思っています。
カテゴリ:建築文化・伝統 2012年1月28日(土)
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